本日のトーク内容
はじめに
皆さんこんにちは、natanです。さあ、始まりました「ろじろじラジオチャンネル」。本日もよろしくお願いします。
前回、スサノヲとクシナダヒメの神生みを解説した際、スサノヲが浮気をしてクシナダヒメが激怒したこと、スサノヲはプレイボーイになってしまったことなどをお話をしました。今日は、何がスサノヲをプレイボーイ化させたのか、その背景についてお話してみたいと思います。
神話の構造について
ヲロチ神話は、世間一般的には、スサノヲが暴れ川を鎮めた話として理解されています。しかし、神話というのは古事記読み方講座第5回でお話したように、複数の分野の話が密接に絡み合いながら同時に語られているので、じつはヲロチ退治の背後では別の話が進行しています。
同時進行している話が複数ある中で、今回のテーマであるスサノヲがプレイボーイ化した背景を考えてみると、ある分野の出来事がそれに関わっていることがわかりました。

ヲロチ神話に描かれる植物の話
裸子植物から被子植物への変容
それは植物です。ヲロチもいろんな植物を身にまとっていましたし、前回お話したスサノヲとクシナダヒメの神生みでも花に関する名前の神々が誕生していました。
そこで植物学という観点からヲロチ神話を再考察してみたところ、この場面に植物界における大変革が描かれていたことを発見しました。それは何かというと、裸子植物から被子植物への変容です。

裸子植物と被子植物の違い
植物の進化は、藻類、コケ植物、シダ植物、裸子植物、被子植物へと段階的に進んでいったと言われています。その中で裸子植物とは、花粉のうや胚珠が剥き出しになっているもののことを言い、高木になる傾向がある点と花をつけない点が特徴で、ヲロチがまとっていたヒノキやスギがそれに該当します。
反対に被子植物は胚珠が心皮にくるまれて子房の中に収まっていて、花を咲かせるのが特徴で、それは植物にとっての生殖器官になります。

被子植物時代の到来
前々からお話しているように、ヲロチの出自にはイザナキが関わっているので、ヲロチが身にまとう植物(コケ・ヒノキ・スギ)はイザナキ世代のものと言え、それはスサノヲから見れば前世代のものになります。
その前世代の化身でもあるヲロチを退治したということは、植物界に新たな時代がやって来たということであり、それは花を咲かせる被子植物時代の到来を告げていると言えます。だから、クシナダヒメとの神生みで花にまつわる神々が誕生したのだと思います。

八塩折の酒の真実
また、花は甘い蜜を持っていますが、これをヲロチ神話では八塩折の酒という隠喩で登場させていることもわかりました。古事記解説第56回のとき私は、一般的に八塩折の酒は口噛み酒と解釈されていますが、じつはそうではなく、それはハチミツのように甘い貴醸酒やデザート酒だとお話しました。
なぜスサノヲは足名椎にそのような甘いお酒を作らせたかというと、植物の観点から言えば、それが花の蜜を作ることの隠喩表現だからだと思います。

自家受粉について
花は蜜を利用して虫や小動物を引き寄せ、自身の受粉を助けてもらいます。ヲロチ神話の場合、ヲロチがその誘われた相手ということになり、ヲロチ退治後、スサノヲとクシナダヒメは神生みを行っているので、無事受粉ができたという感じになるかと思います。
であるならば、スサノヲとクシナダヒメの結婚は、自家受粉という同じ株もしくは同じ花の雌しべに受粉する仕組みを隠喩で表現した話ではないかなと私は考えました。

スサノヲはなぜプレイボーイになったのか?
八重垣の歌に隠された秘密
このような植物に関する話が語られている中で、いよいよ今日のテーマである、なぜスサノヲがプレイボーイになってしまったのかを考えてみると、彼が詠んだ歌にその答えが隠されていることがわかりました。
彼は「八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣つくる その八重垣を」という歌を詠みましたが、これが花のある特徴を歌ったものだったんです。
それは八重咲きの花です。八重咲きの花は花びらの数が多いのが特徴で、その豪華さは見る人をうっとりさせます。ガーデニングでも八重の花は大人気です。スサノヲは「八重の花びらを作ろう」と歌っていたんです。
その八重の花がスサノヲをプレイボーイへと変容させた根本原因になります。というのも、八重の花は雄しべが雄しべであることをやめたとき出来るからです。

植物のトランスフォームについて
植物は私たちが思っている以上に柔軟かつ自由自在にその姿を変形させることができます。ゲーテはそれを「植物のトランスフォーム」と呼び、「植物の根や茎、花に至るまでそのすべては葉がトランスフォームしたものだ」と話します。
そして、一重の花があることをキッカケに八重になることがあり、それが雄しべが花弁化したときなんです。一重の花の雄しべが雄しべであることをやめたとき八重化します。このように「植物は一歩逆行し、生長の順序をひっくり返すことが可能である」とゲーテは話していました。

八重の花になるとは?
花はもともとは女性の象徴です。ですから、雄しべが花弁化して八重の花になるというのは、言い換えれば、男性が女性になるということでもあります。ここで思い出していただきたいのが、ヲロチをお酒でもてなしたときスサノヲが女装をしていたことです。
彼が女装をしたこと、また「八重の花を作ろう」と歌っていることなどを総合して考えてみると、じつは彼自身が八重の花になろうとしているということが見えてきます。八重の花になるとは、男性が女性になることであり、それは別の言い方をすれば、中性的な容姿になることでもあります。

中性的な男性というのはとても魅力的で、自ずと多くの女性が寄ってきます。スサノヲは八重化によって中性的で魅力あふれる男神に変身した。だからプレイボーイ化したのだと私は思いました。
世間一般的にスサノヲは荒々しい神という印象を持たれていますが、それはヲロチ退治をする前までであり、それ以後は中性的なイケメン男神に変身したと私は思っています。

スサノヲと光源氏の共通点
そのスサノヲのカッコ良さを思い浮かべてみると、私は紫式部の源氏物語を思い出します。主人公の光源氏はこの世のものとは思えないほどとても美しい男性で、亡き母が恋しくてたまらず、母親に似た女性を求めては多くの女性との恋に身を投じていきます。
そういえば、スサノヲも生まれたばかりの頃、「死んだお母さんに会いたい」と泣きじゃくっていましたよね。そんな彼も美しい男神になってクシナダヒメ以外の女性にも手を出したことを考えると、私は「光源氏のモデルはスサノヲ(後のオオクニヌシも含めて)だったりして」なんて思っちゃいました。

スサノヲとジュリーの共通点
また、光源氏以外にもスサノヲを思い起こさせる人物がいて、それは1970年代から80年代に一斉を風靡したあの歌手です。それは沢田研二さん、ジュリーです。
あの中性的な顔立ちとカッコ良さとセクシーさ。彼の歌は幸せにしてあげたいのにできない男の不器用さが見事に歌いあげられていて、代表曲の一つ「勝手にしやがれ」の世界観はとくにスサノヲとクシナダヒメの関係性を彷彿とさせるなあと感じ、私は一人で勝手に感動しています。
たとえば、「壁際に寝返りうって 背中で聞いてる やっぱりお前は出て行くんだな」から始まり、「行ったきりなら幸せになるがいい 戻る気になりゃいつでもおいでよ」というくだりは、スサノヲとクシナダヒメの関係も彼のもとに彼女がやって来てはまた帰っていく遠距離別居婚ですし、浮気をしたスサノヲをクシナダヒメが見限って去っていく、そんな彼女の姿を彼が背中で見送っているとするならば、「あらあら、なんて面白い話なんでしょう」なんて思っちゃいます(笑)

さらに、スサノヲが浮気した理由も「別にふざけて困らせたわけじゃない 愛というのに照れてただけだよ」だったらもう胸キュンですね。完全に私の妄想ですけどね(笑)
でも、スサノヲは来るもの拒まず去る者追わずなので、ダメ男なのは言うまでもないのですが、ヲロチを倒した英雄でもあるので「憎みきれないろくでなし」という感じでしょうかね。

そんな八重咲きのイケメン男神スサノヲをジュリーは見事に体現しています。それがコチラ。

これですよ、これ。これが新生スサノヲのイメージです!こんなにセクシーなら、彼の元にたくさん女性がやってきてもそりゃしょうがないよねって話です!
もうこれを見た瞬間、意味不明でモノクロな古事記の世界に一気に色が入って、華やかで甘く香しい世界に変わりました。そして確信しました。古事記は学術的にお堅く考えるものではなく、これは文学であり音楽なのだから芸術として楽しむこと。そして、これが私たち日本人の精神性であり感性なのだと。それを神話として持っている日本人ってホント凄いです!
私が現代の中からも古事記のエッセンスを見いだせているのが何よりの証拠で、時空を超えて古事記の精神は私たちの中に流れ続けているのだと思います。とくに70年代80年代の作品にはそれが顕著に現れているので、とても興味深い時代だなと思います。
まとめ&補足
ここからは今日の話をまとめつつ、補足もしていきたいと思います。
ヲロチ神話を植物の観点から見てみると、そこには裸子植物から被子植物への変遷が描かれていて、その変化の中心に花があります。そして、その花が作り出す蜜がヲロチ神話では八塩折の酒という隠喩で登場しています。
また、スサノヲは花の雄しべをやめて自らを花弁に変えて八重の花になりました。その姿は中性的で美しい容姿のため、その美貌からスサノヲはプレイボーイになりました。その性質を継承するのが次の主人公オオクニヌシです。
さらにスサノヲとクシナダヒメの恋愛は、植物でいえば自家受粉を表現していると思われ、反対にオオクニヌシ時代の恋愛は、昆虫や風などの媒介で行われる他家受粉が描かれるのではないかなと現時点では予想しています。
このヲロチ神話に描かれる花の受粉や八重化が読み取れないとオオクニヌシの話は解読できないので、読み取れて良かったなと今ホッとしています。
また、古事記は神道ではなく古神道をベースに描かれていると思われ、それが私たち日本人の精神性や感性になって今も生き続けていると思います。

稲田宮主須賀の八耳神の意味
ここで一つ言い忘れていたことがありました。足名椎は改名をして稲田宮主須賀の八耳神という名前になりましたが、この八耳神も植物学で考えたらその意味が何となくわかりました。
日経新聞の記事にあったのですが、花には音を聞く能力があるとのことで、花が虫の羽音を聞くと蜜の糖度をアップさせて虫を引き寄せることがわかったそうです。
ヲロチ神話において、花の蜜の隠喩である八塩折の酒を造ったのは足名椎で、彼は八耳神という八つ(いくつも)の耳を持っているので、これが花の聴覚(耳)であり、彼が虫の羽音を聞いて蜜を甘くする仕事をスサノヲから任されたからそのような名前になったのではないかなと私は思いました。
また、耳の数の多さを考えるとそれは花弁のことではないかなとも思いました。花弁に聴覚があるという研究結果があるわけではないのですが、ただオオクニヌシの時代に花弁の形に似た耳を持つ白ウサギが出てくるので関係ありそうだなと考えています。
以上のことから私は、八耳神とはたくさんの花弁である耳を持った神という意味で、彼が花の蜜を甘くする役目を持っていると考えます。

おわりに
今日はスサノヲがプレイボーイ化した理由を植物学の観点から解説してみました。
ジュリーを例に挙げてみましたが、なぜジュリーを選んだかと言うと、個人的な話になりますが、私の母親がジュリー大好きで、小学校の頃に飼っていた犬が女の子だったのですが、その子もジュリという名前にしたくらい好きで、そういうこともあって私の記憶にジュリーが深く刻まれていたからです。
そんな私の心の中のジュリーがスサノヲと合致したときは自分でも驚きましたし、古事記と私の出会いは必然なのかもと思い、嬉しくなりました。
さて、次回はヲロチ神話総括編として、神話全体を整理していきたいと思います。

それでは今日はここまでです。
ご視聴いただきまして、ありがとうございました。
また次回もぜひ聴いてくださいね。
それではまたお会いしましょう!バイバイ!





