本日のトーク内容
はじめに
皆さんこんにちは、natanです。さあ、始まりました「ろじろじラジオチャンネル」。本日もよろしくお願いします。
今日はヲロチ退治を終えたスサノヲが須賀の地にやってきた場面を取り上げ、解説していきたいと思います。
原文/読み下し文/現代語訳

故是以其速須佐之男命 宮可造作之地 求出雲國 尒到坐須賀地而詔之 吾來此地 我御心須賀須賀斯而其地作宮坐 故其地者於今云須賀也
故ここをもちてその速すさの男命、宮造作るべき地を出雲国に求ぎたまひき。尒してすがの地に到りまして詔りたまひしく、「吾此地に来て、我が御心すがすがし」とのりたまひて、其地に宮を作りて坐しき。故其地をば今にすがと云ふなり。
こうして須佐の男命は宮を作るべき土地を出雲国に求めた。そして須賀の地に着いて、「この地に来て、私の心はすがすがしい」と言って、そこに宮を作り鎮座した。その地は今須賀という。

茲大神 初作須賀宮之時 自其地雲立 尒作御歌 其歌曰
夜久毛多都 伊豆毛夜弊賀岐 都麻碁微尒 夜弊賀岐都久流 曾能夜弊賀岐袁
於是喚其足名椎神 告言汝者任我宮之首 且負名號稻田宮主須賀之八耳神
この大神、初めてすがに宮を作りたまひし時、其地より雲立ち騰りき。尒して御歌を作みたまひき。その歌に曰ひしく、
八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣作る その八重垣を
ここにその足名椎神を喚びて、「汝は我が宮の首任れ」と告りたまひ、また名を負せて稲田宮主すがの八耳神と號けたまひき。

この大神が初めて須賀に宮を作ったとき、その地から雲が勢いよく立ち上った。そこでこのような歌を詠んだ。
八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣作る その八重垣を
(八重の雲がわき立つ わき出る雲は八重の垣根を作る 妻が籠もるための八重垣を作ろう その八重垣を)
そうして足名椎神を呼んで、「お前に我が宮の首長を任せたぞ」と言って、稲田宮主須賀の八耳神と名づけた。
今日取り上げるシーンはここまでです。早速解説をはじめましょう。
解説
稲田宮は何を祈願して創建されるお宮か?
無事にヲロチ退治を終えたスサノヲは出雲に住むことを決め、須賀という地に来たとき心がとても清々しくなったので、そこにお宮を造ることにしました。
このお宮は足名椎の改名後の名前「稲田宮主須賀の八耳神」から推測するに、稲田宮と呼ばれるものだと思います。それはいわゆる神社で、お米をはじめとした五穀豊穣を祈願するお宮として創建されるのだと思われます。
また、私はもう一つ、このお宮は妊娠を祈願するためにも創建されるのではないかなと考えています。

というのも、スサノヲが「妻がこもるための八重垣を作ろう」と歌っていて、それはお産をするときに女性が入る小屋を意味し、出産に関することが歌われているからです。また、女性の子宮はよく神社にたとえられ、出産時の産道も拝殿に向かうまでの道(参道)と同じ音を持っていますよね。水田自体も苗という稲の赤ちゃんを育てる場所です。
このように水田と子宮は同じ機能を持っているので、その両方を管理する拠点として「稲田宮」を作ろうとしたのではないかなと私は考えました。

今後スサノヲとクシナダヒメが子どもを生むことを考えると、ヲロチ退治後の構成は、文化の面では水田耕作と田植えに関することが語られ、自然の面では子作りと妊娠(あらゆる生き物が対象)が語られるという感じになるのではないかなと思います。
そして、それらが滞りなく行われるよう管理する場所が稲田宮で、その宮司に足名椎が就任したということだと思います。

「大神」という称号について
続いては称号について見ていきます。今回の場面では急にスサノヲが「大神」と呼ばれています。なぜ急にそうなったのか、過去にも「大神」の称号が出てきた場面がいくつかあったので、それらを参照しながら大神と呼ばれる理由を紐解いてみたいと思います。
過去に「大神」が出てくる場面は、古い順からいくと、黄泉国の終盤にイザナミが黄泉津大神と改名していて、かつ道を塞いだ大きな岩は道反大神、別名も塞ります黄泉戸大神という名前になっています。
次にイザナキの禊において彼もそこで大神と呼ばれ、かつ川で身体をすすいだとき誕生した三柱も墨江の三前の大神と呼ばれていました。最後に、アマテラスとスサノヲのうけいによって生まれた胸形三女神も三前の大神と呼ばれていました。
これらの場面を見比べると、いくつもの共通点があることに気づきます。

一つは大体が物語の終盤であること。そして、その場所に居を構えることが決まったとき「大神」と呼ばれていることです。その居の構え方は、黄泉国で道を塞いだ大きな岩のことを考えると、岩のように動かない、絶対にその場所を譲らない、「私がここの主だ!」といった強い意志が感じられます。
また、岩は道を反転させる、つまり来た道を帰る、追い返す大神という意味を持っていて、それと同じくイザナキもスサノヲを追い払った後、大神としてその場に鎮座しています。最後に、大神という称号は穢れから発生し、その穢れを水で落としたとき、またはうけいでスサノヲの疑いが晴れたときなど、今回のように清々しさを感じたときも大神の称号がつくようです。
以上のことから、スサノヲも強い意志を持って須賀に居を構えることを決意し、かつ彼も今後何かを追い返す、または来た道を戻るよう指示する、そういう行動を取ることが予想されます。また、彼も暴れ川であるヲロチを倒して清々しい気持ちでいるので、これが大神と呼ばれている理由だと思います。
須賀について
根の堅州国について
ここからは須賀という場所について見ていきます。
スサノヲは須賀に永住することを決めましたが、ここである矛盾に気づきます。スサノヲが誕生したばかりの頃、彼は死んだお母さんがいる根の堅州国に行きたいと泣きわめいていました。彼はそれを理由にイザナキに追い払われ、また、高天原にいるアマテラスのところに赴き、わざわざ「僕は根の堅州国に行きます」と報告もしています。
このような過去がある中で、なぜ彼は須賀に永住することを決めたのでしょうか?その答えは意外とシンプルで、須賀が根の堅州国に隣接した場所だからだと思います。

根の堅州国は植物が根を張る領域を指しているのですが、それを水田で考えた場合、田んぼの土の中が根の堅州国になります。ですから、スサノヲが須賀の地に永住することを決めたのは、根の堅州国がその奥にある、隣接しているからだと思われます。
であるならば、イザナキがスサノヲを追い払ったことも、八百万の神が彼を高天原から追い出したことも、スサノヲにとっては承知の上の出来事だったと言えますね。

須賀の場所について
さて、話を須賀に戻しまして、具体的にそこはどこか、どんな特徴を持つ場所なのかを見ていきます。
まず須賀がどこにあるかを考えてみると、スサノヲが稲田宮を建てたとき雲が湧き立ったとのことで、その雲はたぶん入道雲のようなもので、カラッとした夏空が広がった感じだと思われます。その入道雲は山の頂上付近にできるため、その様子をハッキリ観察できたということであれば、須賀は山から遠く離れた場所にあると言えます。

須賀の特徴について
では、須賀はどういった特徴を持つ場所かというと、そこは川の下流やその周囲にできる平野、もしくは三角州と呼ばれる地帯だと思われます。というのも、須賀に稲田宮(水田に関するお宮)を作るということは、そこが水田に適した場所だからです。
水田に適した場所は水はけが悪いところです。平野や三角州は洪水によって運ばれた土砂が堆積してできるので水はけが悪く、古来よりその性質を利用して水田は作られてきました。
日本だけでなく、世界的に見ても三角州(デルタ)地帯は稲作が盛んで、大きな三角州があるベトナム南部のメコンデルタ、タイのチャオプラヤデルタ、エジプトのナイル川のデルタ地帯は稲作の一大産地となっています。
以上のことから、須賀は水はけの悪い平野や三角州で、稲田宮は平野内に創建、水田耕作は三角州内で行うという感じになるかと思われます。

須賀が山から遠く離れた場所である理由
さて、話は一つ前に戻って、須賀が山から遠く離れた場所だと思う理由はもう一つあります。それは、スサノヲはクシナダヒメと距離を取らないといけないからです。
もともとクシナダヒメは川の上流に住んでいて、スサノヲはそこを目指して下流から上流へ上っていきました。そして以前お話したように、彼は足名椎と肥河を挟んで(かなり距離を取って)会話をしていました。
そうした中で成立したクシナダヒメとの結婚もお互いが川を挟んでいるために、七夕伝説に似た夫婦関係を持つことになります。つまり、この夫婦は年に一回しか会えないということ。であるならば、普段のスサノヲは川の上流から遠く離れた場所に住むことになります。

そこが雲が湧き立つ様子が観察でき、稲作ができる場所であるならば、須賀は山から遠く離れた場所で、かつ平野または三角州の辺りというのが今回の結論になります。
稲作と妊娠の共通点について
最後に、話は冒頭の話題に戻りますが、三角州での稲作について情報を収集するたびに、改めてそれは女性の妊娠と本質が似ているなと思いました。というのも、苗の植え付けは受精卵の着床と、苗の成長は胎児の成長と、三角州の形は子宮の形とソックリだからです。
であるならば、やはりそこで育つ命が根を張る場所が根の堅州国なのだろうなと思います。三角州、根の堅州国、ともに「州」の字が入っていますからね。

おわりに
今日は稲田宮や須賀について解説しました。スサノヲが詠んだ歌や足名椎の新しい名前の詳細な解説は、特殊な背景が絡んでいるので、また別の機会にお話しますね。
解説の中盤、大神という称号について触れたとき、スサノヲもイザナキ同様、何かを追い返したり来た道を戻るよう指示したりすることが予想されるとお話しましたが、彼が誰をそうさせるかというと、じつはこれクシナダヒメなんです。
この夫婦は年一でしか会わない夫婦なのですが、その再会時、じつはスサノヲがクシナダヒメを稲田宮に呼ぶんです。「え?男性が女性の家に行くんじゃないの?」と思ってしまうところなんですが、いやいや、ここではクシナダヒメが遠路はるばるスサノヲの元を訪れるんです。
その根拠を次回の解説で詳しくお話したいと思います。

それでは今日はここまでです。
ご視聴いただきまして、ありがとうございました。
また次回もぜひ聴いてくださいね。
それではまたお会いしましょう!バイバイ!
