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古事記☆新解釈【60】ヲロチ退治⑧スサノヲとヲロチは似た者同士!?スサノヲによる堤防建設について

ヤマタヲロチ退治⑧アイキャッチ 新解釈『古事記』
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本日のトーク内容

以下の内容は、放送内容を加筆修正しています。

はじめに

皆さんこんにちは、natanです。さあ、始まりました「ろじろじラジオチャンネル」。本日もよろしくお願いします。

前回は山梨県のお祭り「おみゆきさん」を取り上げ、そこで行われている水防祈願にヲロチ神話との共通点が多々見られるというお話をしました。今日もそれに関連した話として、ヲロチ神話に描かれる堤防建設の話をしたいと思います。

堤防建設について

ヲロチ神話は治水工事の起源を語っている

ヲロチ神話は、スサノヲが暴れ川ヲロチを鎮めた話として広く知られています。それは伝説として理解されているということだと思いますが、私としては、この話は文化レベルにおける治水工事の起源を語ったものだと考えています。

なぜなら、暴れ川を鎮めるためには、現実的なことを言えば、堤防の建設が必要になるからです。また、話の随所に堤防建設をほのめかすキーワードも散りばめられているからです。

ヲロチ神話に散りばめられた堤防建設の要素

箸について

たとえば、ヲロチ神話の序盤に川の上流から流れてきた箸がありましたが、古事記解説第52回のとき「箸は挟むことを通して何かを仲介する役目があるから登場している」とお話しました。何を仲介するかというと、それはもちろん川で、川が氾濫したときにそれを両側から抑えるものを隠喩で箸と表現したのだと私は考えています。つまりそれが堤防ということです。

堤防建設について①

ヲロチの身体を「切り散らした」について

また、スサノヲが寝入ったヲロチの身体を「切り散らした」と言われていましたが、これを「分散させた」と読むことで治水工事の手法が見えてきます。

増水した川の勢いを弱める方法はいくつかあり、その内の一つに水の流れを分散させるというものがあります。前回ご紹介した武田信玄公の治水工事でも、石を積み重ねて作った将棋頭を複数設置して水を分散させたり、聖牛を配置して水の勢いを弱めたり水の流れを変えたりしています。

堤防建設について②

ヲロチに生えている樹木について

その他、ヲロチ自身も堤防に一役買っていて、ヲロチに生えている樹木も水の勢いを抑制する働きを持っています。ヒノキとスギ、そしてこれはヲロチに生えていませんがカラマツなどはよく堤防の周りに植えられていて、そのワケはそれら樹木が氾濫した水の勢いを弱めたり、流れ込んできた土砂の沈殿を促したりする機能をもつからです。

近世に入って堤防に植樹することは禁止されたようですが、書籍『日本の伝統的河川工法1』によると、「大宝2年(702)の大宝律令では、堤防の内外、堤上にヤナギ、ケヤキ、サクラなどの樹木を植えることが定められている」と書かれていました。信玄公が作った堤でも周囲にはケヤキが植えられています。

堤防建設について③

川の土手沿いにサクラの木が植えられている理由

日本全国を見渡してみると、川の土手沿いにはよくサクラの木が植えられています。その理由は、土手は土を積み上げたもので、その土手を強くするためにはたくさんの人の力で踏み固める必要があり、その人手を集めるための手段としてサクラが植えられたからです。

先人たちはローコストで効率よく土手を強化するためにはどうすればいいかを考え、サクラを植えることを思いついたと言われています。サクラを植えれば花見のために毎年たくさんの人が土手に集まって、知らず知らずのうちに土手を踏み固めてくれると思ったからです。

堤防建設について④

武田信玄公の凄さ

前回ご紹介した山梨のお祭り「おみゆきさん」も、信玄公が「おみゆきさんは堤(土手)を踏み固めるのにもってこいだから公祭にするぞ」ということで採用したと言われています。人々が神輿を担いで土手を長い距離歩くことで、自然と土手が踏み固められていくことを信玄公は見通していたからです。しかも、そのお祭りは毎年4/15のサクラが咲く頃に行われていることも見逃せません。

信玄公のすごいところは治水工事だけでなく、堤防のインフラ整備を自然な形で地域の人々に維持管理させるシステムを作ったことです。このシステムを後の徳川幕府は真似て、浅草に吉原へと続く日本堤を作ったと言われています。

堤防建設について⑤

高天原に描かれる堤防建設の要素

このようにサクラを植えたり土手を踏み固めたりといった描写は、ヲロチ神話には明確に記されていないのですが、じつは高天原でのある出来事をヲロチ神話に重ねてみると、それが読み取れてくるんです。

高天原において、アマテラスを天石屋戸から出すために行ったものの中で、神々が天香山でウワミズザクラを取って占ったことや、アメウズメが桶の上に乗って足を踏みとどろこして神がかりをして踊った場面がありました。これらの行為が堤防建設を暗示しています。

また、太陽神アマテラスが天石屋戸にこもるそのシーンは、天文学的には日食が起こったと解釈することができ、日食は「日が食べられる」と読めることから、食べる要素も読み取れます。その後、八百万の神がアメウズメの舞いを見て大笑いすることも含めて全体像を考えてみると、これが花見の起源神話になっていると私は思いました。

堤防建設について⑥

高天原での出来事と花見との共通点

花見の由来を調べてみると、もともとは豊作祈願の行事として農民の間で行われていたものだそうで、花の咲き具合を見てその年の収穫を占ったのがはじまりだと言われています。これが天香山でウワミズザクラで占いをしたことと合致します。また、花見は花を見ながら土手で料理やお酒を楽しむ宴の場として親しまれていますが、八百万の神も桶に乗って踊るアメウズメを囲んで楽しそうに大笑いをして笑顔の花を咲かせていました。

これらの行為はすべてアマテラスを天石屋戸の外に出すため、彼女の荒ぶった気持ちを鎮めるために行われた神事でした。

堤防建設について⑦

高天原とヲロチ神話の違いと共通点

この出来事がヲロチ神話では形を変えて、スサノヲがヲロチをお酒でもてなし、彼が女装姿で場を盛り上げ、ヲロチは大笑いをして楽しいひと時を過ごすという、暴れ川を鎮めるための神事に変わっているのだと思います。

内容は違えど、アマテラスもヲロチも共に荒ぶる者で、それらを鎮めるために神事が執り行われているので、天石屋戸とヲロチ退治は同じ本質で展開している話だと言えます。

堤防建設について⑧

ヲロチが作る自然堤防

ところで、古事記解説第54回のとき、ヲロチは土砂崩れを防ぐ方法や森林資源の活用方法などを教えてくれる知恵者であり、スサノヲもそれをわかってヲロチを「賢い神」と呼んでいるというお話をしましたが、堤防建設に関してもヲロチはポジティブな側面を持っているんです。ヲロチはあらゆるものを破壊する暴れ川ではありますが、それは同時にあるものを創造します。

それは自然堤防です。下記図の赤い部分です。自然堤防とは、川の氾濫によって運ばれた土砂が堆積してできた周囲より少しだけ高い丘のような場所のことを言います。その場所は洪水が発生したとき比較的安全な場所になるため、人々はそこに住居を構えてきました。たぶん、稲田宮もこのような場所に創建されたと思われます。

ですから、ヲロチ自身も自然堤防を作る力を持っていて、人々はその恩恵を享受してきたと言えます。ただ、ヲロチが作る自然堤防はバラつきがあったり横方向に広がったりするので、川の周囲の土地すべてを守ることはできません。

そこでスサノヲが人工堤防として、川を縦方向にガッチリと挟み込むように堤防(図では青色の部分)を作って周囲の土地を守り、かつそこを水田に活用できる土地にし、結果ますますその土地は豊かになっていったということだと思われます。

スサノヲとヲロチは敵同士かと思いきや、じつはお互いは似たもの同士で、凶暴なんだけれども、その裏にそれぞれ方向性の違うポジティブな側面を持っていると言えます。

堤防建設について⑨

八重垣の歌について

八重垣の歌は水田に対しても歌われている

ここからはスサノヲが詠んだ歌と堤防の関係性について見ていきます。スサノヲはヲロチ退治の後、須賀の地で雲が湧き立つ様子を見て「八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣作る その八重垣を」と歌いました。

「たくさんの垣根を作ろう」という意味の歌なので、私は最初、創建したお宮の周囲を囲む垣根のことを歌ったものかなとか、垣根は堤防とも取れるので、この歌は堤防の重要性を歌ったものかなとか思っていたのですが、それも間違いではないけれど、それとは少し意味合いの異なる堤防に対しても歌われていることが見えてきました。

八重垣の歌は稲田宮を創建する際に歌われたもので、稲田宮は五穀豊穣、とくに稲の収穫を願って創建されたお宮なので、この歌はお宮の垣根だけでなく水田も対象になっていると言えます。つまり、水田に対しても「八重垣を作ろう」と歌っているということですね。

八重垣の歌について①

水田の八重垣(畦畔)について

では、その水田の八重垣とは何かというと、それは水田の周囲に作られた畦畔(つまりあぜ道のこと)だと考えます。それは盛土で作られる場合もあれば、杭や板で作られる場合もあります。福岡県の板付いたづけ遺跡(弥生初期)や静岡県の登呂とろ遺跡(弥生後期)では、杭や板で作られた畦畔が発見されています。

畦は川の堤防と同じ性質や機能を持っていて、水を外部に漏らさないよう水の動きをコントロールする役割があり、また畦はよくネズミやモグラなどの害獣によって穴を開けられて崩壊してしまうことがあるので、そうならないよう強く踏み固める必要があります。

八重垣の歌について②

ということは、ヲロチ神話は暴れ川を鎮める話ではあるけれど、本当の主題は堤防や畦といった水を制御する強い壁を作ることなのかもしれません。「水を制するものは国を制する」。水のコントロールこそが文明を切り拓き、豊かな国を作るということを古事記は伝えているのだと思います。

それを成し遂げたスサノヲは本当に頼もしい神様です。だから彼は、堅固な壁を創造する神と言えるかもしれません。

八重垣の歌について③

壁は道でもある

ところで、スサノヲが作る壁はただの壁ではなく、畦道や堤防のように、その上を歩ける、行ったり来たりできる道でもあるというのが印象的だなと個人的に思いました。

しかもその壁のような道は花見の宴の場だったり、前回お話した「おみゆきさん」のようにお姫様が子作りするためにお宮に向かう道だったり、徳川幕府が作った日本堤のように吉原へ向かう道(つまり色恋を求めて歩く道)だったりと、何だか嬉しい楽しいワクワクドキドキした道になっているのも印象的です。

八重垣の歌について④

じつはこの道がオオクニヌシの時代に、男女の色恋の道として形を変えて出てくることになるのですが、それはまた今後の解説のお楽しみということで。現時点では、その道を敷いたのはじつはスサノヲだった、ということを皆さんには覚えておいていただければなと思います。

おわりに

というわけで、今日はヲロチ神話から読み取れる堤防建設に関するお話をしました。次回は本編に戻って、スサノヲとクシナダヒメの神生みについて解説したいと思います。

natan
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それでは今日はここまでです。
ご視聴いただきまして、ありがとうございました。
また次回もぜひ聴いてくださいね。
それではまたお会いしましょう!バイバイ!

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