本日のトーク内容
はじめに
皆さんこんにちは、natanです。さあ、始まりました「ろじろじラジオチャンネル」。本日もよろしくお願いします。
今日はヲロチ神話の最終ブロックである、スサノヲとクシナダヒメの神生みについて解説していきたいと思います。
原文/読み下し文/現代語訳

故其櫛名田比賣以 久美度迩起而 所生神名 謂八嶋士奴美神 又娶大山津見神之女 名神大市比賣 生子 大年神 次宇迦之御魂神 二柱
故その櫛名田比売をもちて、くみどに起こして生める神の名は、八嶋じぬみ神と謂ふ。また大山津見神の女、名は神大市比売を娶して生める子は、大年神。次にうかの御魂神。二柱。
須佐の男命は櫛名田比売と神を生んだ。その名は八嶋士奴美神と言う。
また、大山津見神の娘である神大市比売を娶って、大年神、次に宇迦の御魂神の計二柱を生んだ。

兄八嶋士奴美神 娶大山津見神之女名木花知流比賣 生子 布波能母遲久奴須奴神 此神 娶淤迦美神之女名日河比賣 生子 深淵之水夜禮花神 此神 娶天之都度閇知泥上神 生子淤美豆奴神 此神 娶布怒豆怒神之女 名布帝耳上神 生子 天之冬衣神……
兄八嶋じぬみ神、大山津見神の女、名は木花ちる比売を娶して生める子は、ふはのもぢくぬすぬ神。この神、おかみ神の女、名は日河比売を娶して生める子は、深渕の水やれ花神。この神、天のつどへちね神を娶して生める子は、おみづぬ神。この神、ふのづの神の女、名はふて耳神を娶して生める子は、天の冬衣神。

……此神 娶刺國大上神之女 名刺國若比賣 生子 大國主神 亦名謂大穴牟遲神 亦名謂葦原色許男神 亦名謂八千矛神 亦名謂宇都志國玉神 并有五名
この神、刺国大神の女、名は刺国若比売を娶して生める子は、大国主神。またの名は大穴むぢ神と謂ひ、またの名は葦原しこ男神と謂ひ、またの名は八千矛神と謂ひ、またの名はうつし国玉神と謂ふ。并せて五つの名あり。

兄の八嶋士奴美神は大山津見神の娘である木花知流比売を娶り、布波能母遅久奴須奴神を生んだ。
この神は淤迦美神の娘である日河比売を娶り、深渕の水夜礼花神を生んだ。
この神は天の都度閇知泥神を娶り、淤美豆奴神を生んだ。
この神は布怒豆怒神の娘である布帝耳神を娶り、天の冬衣神を生んだ。
この神は刺国大神の娘である刺国若比売を娶り、大国主神を生んだ。この神は大穴牟遅神、葦原色許男神、八千矛神、宇都志国玉神という、計五つの名前を持つ。
今日取り上げるシーンはここまです。それでは早速解説をはじめましょう。
解説
今日のテーマ
スサノヲはヲロチを退治した後、クシナダヒメとの間に子どもをもうけました。序盤に「故その櫛名田比売をもちて、くみどに起こして生める神…」という言い回しがありますが、これはイザナキとイザナミが島生みと神生みを行ったシーンでもそう言われていたので、ここから今回のシーンはその島生みと神生みに関連している場面だということがわかります。
ということは、今回のシーンも島生み・神生みという形をとりながら、今後の話のシナリオを生んでいるということになります。そうなると、この場面は抽象性が高く、具体的に解説することが難しいということになるので、今日は生まれた神々を整理しながら、そこから読み取れる今後の物語の方向性についてお話していこうと思います。
島生み(設計図)に該当する神々
まずは生まれた神々を整理していきます。

最初にスサノヲとクシナダヒメが生んだ子どもは八嶋士奴美神という神様です。またそれとは別にスサノヲは大山津見神の娘、神大市比売も娶っていて、その間に生まれたのが大年神と宇迦の御魂神の二柱です。
ここで一つわかることは、クシナダヒメとの間にできた八嶋士奴美神には嶋の字が入っているので、この段階が島生みに該当すると言えます。
ところで島生みというのは、物理的な島を生むことではなく、物語全体の枠組みや設計図を生むことの隠喩表現なので、八嶋士奴美神はそういう意味合いで生まれているということになります。そして、この設計図をもとに細かなシナリオが神生みとして設定されていく形になります。
もう一家族の神大市比売との間にできた子どもも見てみると、大年神と言って「大きい年の神」という、何やら大きなスパンをもつ神様のようなので、こちらも今後の物語の枠組み、つまり島生みになっていると考えられます。
神生み(シナリオ)に該当する神々
つづいて神生みを見ていきます。これらの神は、先ほどの島生み(枠組み)の中に設定されるシナリオとして生まれています。

八嶋士奴美神を筆頭に子孫がたくさん誕生していき、五番目の天の冬衣神と刺国若比売の間に次の主人公である大国主神が生まれて神生みは完了します。オオクニヌシは他に四つの名前を持っていて、これは彼の成長段階に応じて付く名前だったり、そのときの彼の特徴を表したりしていると考えられます。
神々の名前はなぜか笑える
さて、この神々を詳しく見ていくと、何とも不思議な名前の神が多く、何を意味しているのかよくわからないのが正直なところです。それでもめげずによく見ていくと、「木花ちる」だったり「水やれ花神」だったり、何となく花に関わることを言っているような感じがします。
しかし、他の神は一体何を意味しているのかさっぱりわかりません。こういうときは、何も考えずただ神々の名前を眺めてみるのがベストです。そうしてみたところ、私は何だか急に笑えてきたんです。
なぜ笑えてきたかというと、まず八嶋士奴美神が何ともよろしくない名前に思えたからです。だって「じぬみ」って音が悪くないですか?個人的な感覚ではありますが、「じぬみ」ってすごく音が悪くて、どこか汚いというかなんというか。ちょっと酷い名前だなと思ったんです。オオクニヌシの別名オオナムヂもそうです。これが個人的に面白かったです。

また、他にも笑える部分がもう一つあって、それは神々が何だか怒っていることです。三番目の深淵の水夜禮花神なんて「水をやれ!」という命令口調に感じますし、四番目の布帝耳神なんて不貞腐れて人の話に耳を傾けようとしない、そんな印象を感じました。
その親の布怒豆怒神はいつどこで誕生した神か全然わかりませんが、でも怒りの「怒」が二個も入っているので、これ相当怒ってますよ。

神々が怒っている理由
これがすごく面白くって、なぜ神々は怒っているのかを考えてみたところ、意外と簡単にその理由がわかりました。それは、スサノヲがクシナダヒメだけでなくカムオオイチヒメも娶ったからです。要は、スサノヲが浮気をしたからです。
その浮気に対してクシナダヒメが怒った。そのときの感情がさまざまな側面をもった神となって誕生した。これが神生みの真相だと私は思いました。
スサノヲは高天原でもそうだったのですが、許容範囲をどうしても越えて行動してしまうクセがあるんですよね。彼は丸く収めることを知らず、何事も超越してしまい、その結果あらぬ方向にいってしまう傾向があります。
そして、今回も一人の女性では満足できず、他の人にも手を出してしまった。高天原で八百万の神が怒ったように、今度はクシナダヒメがスサノヲに対して怒ったのだと思います。
だからスサノヲは、神代で初めて浮気をした神様ということになりますね。この性格を受け継いだのがオオクニヌシで、だから彼はいろんな女性に手を出すプレイボーイとして登場しているのだと思います。

スサノヲが高天原に昇った頃は、こう言ったら失礼かもしれませんが、野暮ったい男子でした。そんな彼が八百万の神にヒゲを切られ爪も抜かれて、さらにはヲロチ退治をすることによって一皮むけた、垢抜けた。そうなったら今度は恋愛の方に興味津々になってしまい、度を越してしまったという感じではないかなと思います。

神生みから読み取れるシナリオ
このように考えてみると、ヤシマジヌミノカミが娶ったコノハナチルヒメから、クシナダヒメの恋が散っていくような切なさと悲しさが感じられるなと思いました。であるならば、今回の神生みはこのようなシナリオになっているかもしれません。

一番目に恋が散り、二番目に涙が止めどもなく流れる。これはヒカワヒメの親がオカミノカミといって、この「オカミ」はヲロチの原型であるクラオカミノカミから推測するに、勢いよくどっと流れ出る水を意味すると思われるからです。
三番目に「水やれ」とあるのでたぶん涙が枯れ果て、四番目フテミミノカミで怒りが湧いてきて聞く耳を持たなくなった。これらを総合すると、恋が散っていく様子を花で例えたという感じでしょうか?
これが今後の物語のシナリオということであれば、オオクニヌシの時代は男女の色恋でいろんな波乱が巻き起こることは容易に想像がつきますね。そのはじまりがスサノヲの浮気だっただなんて。
前回もお話したように、彼は道を作る神でもあるので、「そんな波乱な道を作らなくても…」なんて思ってしまいますが、でも神様も恋愛でいろいろ悩んでいるんだなということがわかると、すごく親近感が湧いてきますね。
おわりに
というわけで今日はスサノヲとクシナダヒメの神生みについて、今後の展開を読み取ってみました。
今日のお話を聞いて、「スサノヲがプレイボーイになっちゃっただなんて」と驚かれた方もいらっしゃるかもしれません。じつはスサノヲのプレイボーイ化には植物界のある大変革が関わっているんです。次回は何がスサノヲをプレイボーイ化させたのか、その背景を植物学の観点からお話したいと思います。

それでは今日はここまでです。
ご視聴いただきまして、ありがとうございました。
また次回もぜひ聴いてくださいね。
それではまたお会いしましょう!バイバイ!
