
私の宇宙からこんにちは、natanです。
今日は、子どもに見られる四つの愛着パターンについてお話します。
▼ 参考文献 ▼
と、その前に!
愛着形成は、子ども自身が「自分は愛されている」と実感するだけでなく、愛着のもう一つの特性である「安全基地」というものを子どもの心にもたらします。
まずはそれについて説明したいと思います。
安全基地とは
愛着の絆が問題なく形成されると、子どもは母親といることに安心感を持つだけでなく、母親がそばにいなくても次第に安心していられるようになります。
安定した愛着が生まれることは、その子の安全が保証され、安心が守られるということでもあります。
ボウルビィの愛着理論を発展させた、アメリカの発達心理学者メアリー・エインスワースは、愛着のこうした働きを
安全基地
という言葉で表現しました。
子どもは愛着という安全基地がちゃんと確保されているとき、安心して外界を冒険しようという意欲を持つことができます。

逆に、母親との愛着が不安定で安全基地として十分機能していないとき、子どもは安心して探索行動を行うことができません。
その結果、知的興味や対人関係においても、無関心になったり消極的になったりしやすくなります。
守られていると感じる子どもほど、好奇心旺盛で活発に行動し、何事にも積極的です。
このことは、大人においても基本的に同じです。
安定した愛着によって、安心感、安全感が守られている人は、仕事でも対人関係でも積極的に取り組むことができます。
「安全基地」を確保している人は、外界のストレスにも強いのです。
さらにいうと、幼いころにしっかりと守られて育った人では、大人になってからも自分をうまく守れるのです。
それでは、今日の本題に入ります。
子どもの四つの愛着パターン
愛着の形成について、愛着が安全基地としてうまく機能しているか、ストレスに対してどういう愛着行動を示すかによって、子どもの愛着のパターンはおおむね四つに分かれます。
その四つを知っておくことは、大人の愛着スタイルを理解するうえでも非常に役立ちます。
子どもの愛着パターンを調べる方法としてよく用いられるのが、上述したアメリカの発達心理学者メアリー・エインスワースが開発した「真奇場面法」とよばれるものがあります。
子どもと母親を離し、また再会させるという場面設定をして、そのときの子どもの反応を観察する。
子どもには、以下の四つの愛着パターンがあります。
- 安定型
- 回避型
- 抵抗/両価型
- 混乱型
安定型
母親から離されると、泣いたり不安を示したりするが、その程度は過剰というほどではなく、母親が現れると素直に再会を喜び、母親に抱かれようとします。
約6割強の子どもは、この愛着パターンを示します。
回避型
母親から引き離されてもほとんど無反応で、また、母親と再会しても目を合わせず、自分から抱かれようともしません。
回避型は安全基地を持たないため、ストレスを感じても愛着行動を起こさないタイプだということもできます。
この愛着パターンは、1.5~2割の子どもに認められます。
小さいころから児童養護施設などで育った子どもに典型的にみられますが、親の関心や世話が不足して放任になっている場合でもみられます。
回避型の子どもは、その後反抗や攻撃性の問題がみられやすいのが特徴です。
抵抗/両価型
母親から離されると激しく泣いて、強い不安を示すのに、母親が再び現れて抱こうとしても、拒んだり嫌がったりします。
しかし、いったんくっつくと、なかなか離れようとしません。
母親の安全基地としての機能が十分でないために、愛着行動が過剰に引き起こされていると考えられます。
このタイプは1割程度に認められます。
親がかまってくれるときと、無関心なときの差が大きい場合や、神経質で激しく過干渉な親の場合が多いです。
抵抗/両価型の子では、その後、不安障害になるリスクが高く、また、いじめなどの被害に遭いやすいとされています。
混乱型
混乱型は、回避型と抵抗型が入り混じった、一貫性のない無秩序な行動パターンを示す特徴があります。
まったく無反応かと思うと、激しく泣いたり、怒りを表したりします。
また、肩を丸めるなど親からの攻撃を恐れているような反応をみせたり、逆に親を突然叩いたりすることもあります。
混乱型は、虐待を受けている子や、精神状態がひどく不安定な親の子どもにみられやすいのが特徴です。
安全基地が逆に危険な場所となることで、混乱をきたしていると考えられます。
親の行動が予測不能であることが、子どもの行動を無秩序なものにしています。
混乱型の子どもでは、その後、境界性パーソナリティ障害になるリスクが高いとされています。
愛着が極めて深刻なダメージを受けると、愛着をまったく求めようとしなくなったり、見境なく誰にでも愛着したりするようになります。
愛着とは特定の人に対する特別な結びつきのことをいいます。
誰にも愛着を求めようとしない場合も、誰にでも愛着を求めようとする場合も、愛着の形成につまづいているということになります。
統制型と三つのコントロール戦略
統制型の愛着パターン
不安定な愛着状態におかれた子どもでは、3~4歳のころから、特有の方法によって周囲をコントロールすることで、保護や関心が不足したり、不安定だったりする状況を補うようになります。
統制型の愛着パターン
とよばれるもので、下記のような特徴があります。
「そんな小さいうちから…」と思われるかもしれませんが、子どもによってはほんの4歳ごろから親の顔色をみて、機嫌をとったり慰めようとしたりという行動を示すのです。
親が良くない行動をとったときや、自分の思い通りにならないときに、叩こうとするといった攻撃的手段に訴えることはさらに早く、3歳ごろから認められる場合もあります。

このコントロール行動は、無秩序な状況に、子どもながらに秩序をもたらそうとするものだといえます。
こうしたコントロール戦略は、年を重ねるごとにさらに分化を遂げて、特有のパターンを作りだしていきます。
これは、その後の人格形成に大きな影響を及ぼすことになります。
三つの戦略
- 支配的コントロール
- 従属的コントロール
- 操作的コントロール
支配的コントロール
暴力や心理的優越によって、相手を思い通りに動かそうとします。
従属的コントロール
相手の意に従い恭順することで、相手の愛顧を得ようとする戦略です。
一見すると、コントロールとは正反対に思えますが、相手に合わせ、相手の気に入るように振る舞ったり、相手の支えになったりすることで、相手の気分や愛情を意のままにしようとする点でコントロールといえます。
操作的コントロール
支配的コントロールと従属的コントロールが、より巧妙に組み合わさったもので、相手に強い心理的衝撃を与え、同情や共感や反発を引き起こすことによって、相手を思い通りに動かそうとします。
いずれのコントロール戦略も、不安定な愛着状態による心理的な不足感を補うために発達したものです。
これらは比較的幼いころから継続してみられることが多い一方で、大きく変化する場合もあります。
また、相手によって戦略を変えてくるということも多いです。
それによって、バランスをとっているともいえるでしょう。
愛着パターンから愛着スタイルへ
幼いころの愛着スタイルは、まだ完全に確立したものではなく、相手によって愛着パターンが異なることも多く、養育者が変わったり、同じ養育者でも、子どもへの接し方が変わったりすることでも変化します。
そのため、この時期の愛着の傾向は、愛着スタイルとは言わずに、
愛着パターン
と呼んで区別します。
子どもにおいて調べることができる愛着パターンは、特定の養育者との間のパターンに過ぎず、まだ固定化したものではないからです。
両親と安定した愛着関係を持つことができれば、安定した愛着スタイルが育まれやすくなります。
しかし、親との愛着が不安定な場合でも、それ以外の大人や年長者、仲間に対する愛着によって補われ、安定した愛着スタイルが育つこともあります。
ただ、昨今のように人間関係が希薄になってくると、親以外との人間関係が乏しくなり、親との愛着がうまくいかない場合に他で補われにくいという状況があります。
親をはじめ、子どもにとって重要な他者との間で愛着パターンが積み重ねられていくうち、10代初めのころから、その人固有の愛着パターンが次第に明確になります。
そして成人するころまでに、愛着スタイルとして確立されていきます。
次回はいよいよ、大人の愛着スタイルについてお話したいと思います。
▼ 参考文献 ▼