本日のトーク内容
皆さんこんにちは、natanです。さあ、始まりました「ろじろじラジオチャンネル」。本日もよろしくお願いします。
前回は、スサノヲは水に関する神様で、そこから派生している彼のいろいろな生物学的側面についてお話させていただきました。たとえば、彼は淡水生物の場合は田んぼで働くイトミミズ、海洋生物ではリュウグウノツカイでもあるという感じです。
今日から天石屋戸シーンの解説に入りますが、今回はスサノヲが屋敷の天井から投げ入れた馬に注目しながら、前回とはまた違った彼の姿についてお話してみたいと思います。
まずはいつものように、読み下し文、現代語訳を読み上げます。声をもって訓む部分は赤字で表記し、特殊な訓読みは原文の横に訓み方を記載しています。トーク内容のチャプター一覧、参考文献はチャンネル概要欄に記載しています。
原文/読み下し文/現代語訳
天照大御神 坐忌服屋而 令織神御衣之時 穿其服屋之頂 逆剥天斑馬剥而 所堕入時 天服織女見驚而 於梭衝陰上[富登]而死
故於是天照大御神見畏 開天石屋戸而 刺許母理坐也
尒高天原皆暗 葦原中國悉闇 因此而常夜徃
於是萬神之聲者 狭蠅那須滿 萬妖悉發
天照大御神、忌服屋に坐して、神御衣織らしめたまひし時、その服屋の頂を穿ち、天斑馬を逆剥ぎに剥ぎて堕し入るる時、天服織女見驚きて、梭に陰上を衝きて死にき。
故ここに天照大御神見畏みて、天石屋戸を開きて、さしこもりますなり。
尒して高天原皆暗く、葦原中国悉に闇し。これによりて常世往きき。
ここに萬の神の聲は、さ蠅なす満ち、萬の妖悉に發りき。
天照大御神は忌服屋にいらっしゃって、神に献上する衣を織らせていたとき、須佐の男命がその服屋の天井に穴を空け、まだら模様の馬の皮を逆方向に剥いで落とし入れると、天服織女はビックリして、梭で陰を突いて死んでしまった。
これを見た天照大御神は恐ろしくなり、天石屋戸を開いて中に籠もってしまった。すると高天原と葦原中国のすべてが暗い闇に包まれ、夜ばかりが続いた。
そして、たくさんの神の声はうるさい蠅のように満ち、たくさんの災いが至るところで起こった。
これが今日取り上げるシーンです。
解説
前回のおさらい
今日は、前回に引き続き、スサノヲの多様な生物学的側面についてお話したいので、馬の皮を剥ぐことや機織り娘が死んでしまう理由については、次回解説したいと思います。
さて、前回お話したように、スサノヲは水に関する神様で、その水とは生命のゆりかごを象徴したものでした。それを彼の本質として、そこからいろんな側面が生じ、その中には水銀や土壌生物、また淡水生物や海洋生物などがいました。そのすべてが潜ったり泳いだりするわけですが、今回のシーンにおいては、なぜか馬が登場しています。
スサノヲは水の神様なのに、なぜ水に関係ない馬が出てくるのでしょうか?もちろん、馬を通してこのシーンを読み進めても物語は読めます。しかし、私としては、せっかくスサノヲが水の神だとわかったので、彼と馬の間にある関係性を考えてみることにしました。そして、漢字をベースに考えたとき、あることが見えてきました。
投げ落とした馬はタツノオトシゴ説
スサノヲは海の神です。そこに馬という漢字がプラスされると、「海馬」となる。さて、この漢字は何と読むでしょうか?答えは「タツノオトシゴ」です。スサノヲが屋敷の天井から投げ落とした馬は、なんと、タツノオトシゴだった!
タツノオトシゴは、上半身は馬にそっくりで、下半身は魚。生物学的には魚の部類に入るそうです。
一般的に、タツノオトシゴは竜に似ていることから、タツノオトシゴの「たつ」は「竜」と表されることが多いようです。しかし、私は「辰」がいいなと思います。そうすれば、辰砂という硫化水銀の神であるスサノヲのことになるし、また黄泉国から禊シーンまでずっと「辰」に関する話が続いていたからです。「辰」の要素を持つスサノヲが投げ「落とした」馬が「辰の落とし子」。こっちのほうがしっくりきませんか?
タツノオトシゴはオスが出産する
さて、タツノオトシゴについて詳しく調べてみたところ、スサノヲと一致する点を他にも発見することができました。
タツノオトシゴで注目すべき特徴は、オスが卵を育てて出産すること。オスのお腹には育児嚢があり、そこにメスが卵を生み、オスが卵に栄養や酸素を与えながら育て、そして出産もするそうです。
この育児嚢には哺乳類のメスの子宮と同じく胎盤があり、妊娠期間中に栄養や酸素を子に運ぶための遺伝的指令も哺乳類のメスと同じだそうです。オスが子宮に似たものを持っているという点から、スサノヲが死んだお母さんの国、根の堅州国、つまりそこは身体宇宙論でいえば女性の子宮ですが、なぜそこに行きたがっているのか、その理由が何となく見えてきました。
スサノヲが根の堅州国に行きたがっている理由
それは、彼がタツノオトシゴの側面を有し、子育てをする環境に身を置きたいと思っているからだと思います。子宮に似た育児嚢を持つタツノオトシゴは子育て上手だそうで、そのため古来より日本では、タツノオトシゴは安産や子宝祈願のお守りとして信仰の対象になっていたそうです。だから、スサノヲは根の堅州国に行きたがっているのではないでしょうか?
また、その考察を通してちょっと思ったことがあります。少し話が飛躍しますが、もしかしたら哺乳類のメスが持つ子宮という器官は、男性原理の力が生み出した、と言えるかもしれないなと思いました。なぜなら、父であるイザナキは「産屋を建てる」と言って、禊のときに子宮に関する神、和豆良比能宇斯能神を生んでいるからです。
また、子宮という根の堅州国に行きたがっているスサノヲのことも考えると、私はてっきり、子宮は女性原理の力による女性のために作られた臓器だと思っていたんですが、もしかしたら違うのかもしれない…。男性原理の力が大きく関わっている可能性があるなと思いました。
リュウグウノツカイとの共通点
さて、そんなタツノオトシゴは「ウミウマ」や「ウマノコ」など、いろんな呼び名があるそうですが、和歌山県では「リュウグウノコマ」と呼ばれているそうです。「リュウグウ」出ましたね、前回触れたスサノヲの生物学的側面の一つ、リュウグウノツカイと同じ名前を持っています。
ということは、根の堅州国、子宮、そこが竜宮ということなのかもしれないですね。
それだけでなく、タツノオトシゴ(別名:リュウグウノコマ)とリュウグウノツカイは、他にも共通点があることがわかりました。それは泳ぎ方です。リュウグウノツカイは、一般的には縦泳ぎをしますが、遊泳能力は低く、流れに身を任せているそうです。
そして、タツノオトシゴも縦泳ぎで、かつ、泳ぐスピードが世界一遅い魚と言われているそうです。時速16mで、一分間に27cmしか進まず、それはほとんど波に流されているようなものだそうです。ですから、リュウグウノツカイとタツノオトシゴは、運動能力が似ていると言えます。そういえば、田畑にいるミミズも縦方向に潜りますね。
スサノヲは建速須佐の男命と「建速」と言われているのに、彼から生じている生物の動きはとても遅いというのは、なんとも奇妙で面白いですね。このあべこべの性質がどういう意味を持っているのか、今はまだわからないので、今後の考察の課題として調べていきたいと思います。
脳の海馬について
さてここからは、タツノオトシゴと名前が似ていることに関連して、忘れてはいけない大事な身体器官についても触れたいと思います。それは、脳の海馬です。この「海馬」という名前は、ギリシャ神話に出てくるポセイドンが乗っている上半身が馬で下半身が魚のモンスターからきているとされていますが、じつは名前の由来はよくわかっていないそうです。
でも、海馬は上下反転させるとタツノオトシゴにそっくり。ですから、ポセイドンが乗っているモンスターは、じつはタツノオトシゴではないかなと私は思いました。ですが、どうして脳の海馬はタツノオトシゴと似ているのでしょうか?この謎を解くために、まずは海馬がどういった機能を持っているのか見ていきましょう。
脳の海馬は、短期記憶から長期記憶へと情報をつなげる中期記憶を担う器官です。日常的な出来事や学習したことを、海馬でいったん整理整頓してから、大脳皮質へ渡して保存していきます。海馬は記憶を仕分け、よその器官に送る司令塔としての役割を持っています。それ以外では、海馬は判断能力にも関わっているそうです。
この機能を知ったとき、「あ、そういえば、古事記の中で(次回以降触れるシーンですが)、天石屋戸に閉じこもってしまったアマテラスを引っ張り出すためにはどうすればいいかを思金神に考えさせる場面があったな」ということを思い出しました。その神は、現状をどう打破すればいいかを考え判断する神様だと思われます。
ですから、脳の海馬とタツノオトシゴの関連性についての科学的背景はわかりませんが、古事記ではタツノオトシゴ経由で脳の海馬的神様が出てきているので、そこから考えるに、神話の世界においてはタツノオトシゴと脳の海馬は同時発生したから形も名前も似ているのではないかなと私は思いました。あくまでも神話学的に見たらの話ですけどね。正解はわかりませんが、でも、タツノオトシゴと脳の海馬には、深い関係性があるのだと思います。
ということで、以上がスサノヲのもう一つの側面、タツノオトシゴについてのお話でした。次回は、皮を剥いだ馬や機織り娘についてお話したいと思います。
それでは今日はここまでです。
ご視聴いただきまして、ありがとうございました。
また次回もぜひ聴いてくださいね。
それではまたお会いしましょう!バイバイ!