本日のトーク内容
はじめに
皆さんこんにちは、natanです。さあ、始まりました「ろじろじラジオチャンネル」。本日もよろしくお願いします。
これまで11回に渡ってヲロチ神話を解説してきましたが、今日は総括前編としてヲロチ神話の全体像を整理してみたいと思います。
ヲロチ神話を解読してわかったこと
ヲロチ神話を解読してわかったことの一つに、ヲロチとスサノヲは対称的で、かつ似た者同士でもあることが挙げられます。そこで今日は、ヲロチとスサノヲの特徴を比較しながら、これまで解説してきた内容を図で整理していきたいと思います。
図の説明
まず使用する図の説明ですが、古事記は自然からどのように文化が生まれたのか、その経緯を語っているので、ヲロチ神話の構造は自然と文化に分けることができます。そして、自然を象徴する存在がヲロチ、文化を象徴する存在がスサノヲとして登場しています。

次に、ヲロチは肥河の上流付近からやってくるので、上から下に向かう矢印を配置しました。反対にスサノヲは肥河の下流から上流へ上がっていくので、矢印は下から上へ向かう形に配置しています。この矢印の方向に沿った流れでお互いの特徴を羅列していきます。
また、矢印が向かう方向の上がネガティブ、下がポジティブとなっています。
つづいて、図の真ん中「共通点」という列は、ヲロチとスサノヲがどう似ているか、その特徴を端的に記載していきます。
ヲロチの特徴と活動内容
それでは早速本題に入ります。はじめにヲロチの特徴とその活動内容から整理していきます。上から下に、左上の赤の番号順に見ていきます。

まず、ヲロチは暴れ川を象徴する怪物で、毎年やってきては娘たちを食べていってしまいます。それは川が氾濫した際、田んぼを飲み込んでしまうという意味です。
この右側にある四角で囲んだ数字はその場面を解説した回の番号なので、「暴れ川については第53回で解説したよ」という意味になります。
次に【1-2】に移ると、ヲロチの正体を深堀った際、この怪物はイザナキやアマテラス、八百万の神などが生み出した負の感情(怒りや悲しみなど)が集結したものだということがわかりました。
このようにネガティブな側面を持つヲロチですが、ポジティブな側面もあり、それが【1-3】自然堤防を作る力を持っていることです。自然堤防は洪水が去った後に形成されます。
同じくポジティブな側面として、【1-4】ヲロチの身体に生えている植物から、ヲロチは土砂崩れを防ぐ方法として森林の管理方法を教えてくれたり、そこで伐採した木を運搬する方法や活用方法なども教えてくれていることがわかりました。そのため、スサノヲがヲロチを「賢い神」と呼んでいた点はとても重要です。
以上がヲロチの代表的な特徴になります。
スサノヲの特徴と活動内容
次に、スサノヲの特徴とその活動を見ていきます。スサノヲは下から上へ、右上の青の番号順に見ていきます。

まず一番下の【青1-1】から。ヲロチ側を見ると、ヲロチは知恵を持った賢い神となっていて、スサノヲも酒造りの方法やお酒の配置方法などを足名椎たちに的確に指示していたので、同じく知恵を持った神様だと言えます。よって、両者の共通点は「知恵者」になります。
次に【青1-2】は、ヲロチは自然堤防を作る力を持っていますが、スサノヲは人工堤防を作る力を持っています。暴れ川ヲロチを鎮める話は、堤防を作ってその被害を防ぐことの隠喩表現だからです。
そして、両者の共通点は堤防という「壁を作る」こと、またこれは後ほど触れますが、壁は特定の領域を形成することになるので「領域を作る」も共通点になります。
次に【青1-3】は、ヲロチは神々の負の感情を集結させたものですが、スサノヲとクシナダヒメの神生みでも女性(クシナダヒメ)の負の感情(スサノヲの浮気に対し、悲しみ怒る感情)にまつわる神様が誕生しました。スサノヲも感情に作用する存在なので、共通点は「感情に関わる」になります。
最後【青1-4】は、ヲロチは暴れ川でたくさんの娘を食べてきましたが、スサノヲも最終的には比喩的な意味で女性を食べる、つまりたくさんの女性と寝るプレイボーイになりました。暴れ川とプレイボーイは共に自由奔放なので、共通点は「自分本位」になります。
以上がヲロチとスサノヲの代表的な特徴です。このように整理してみると、お互いは鏡に写したような存在だということがハッキリわかりますね。また、両者共にネガティブ要素とポジティブ要素を持っている点も面白いです。
【ヲロチ側】後に生まれたもの(大)
さて、今度はヲロチ側に戻って、真ん中の項目「後に生まれたもの(大)」を見ていきます。「後に生まれたもの」というのは、洪水が去った後やヲロチが退治された後に出現したサイズが大きめのものという意味です。

まず【赤2-1】は、ヲロチの身長は八つの渓谷と峡谷に及ぶほど長いと言われていて、それは川の長さに対して言われたものですが、同時に山脈の出現もほのめかしているので、【2-1】は山脈の誕生になります。
次に【赤2-2】は、暴れ川を鎮めた後は穏やかな川や清流が出現します。そして、清らかな川は清々しさの隠喩表現になり、神々の負の感情とは性質は真反対ではありますが、感情が関わっているということで同じ列に配置しました。
次に【赤2-3】は、ヲロチの自然堤防の形成に付随して出来るものを挙げました。自然堤防は堆積した土砂によって周囲より大地が小高くなるので、昔から人々の居住スペースになってきました。また、自然堤防の周辺には後背湿地と呼ばれるものができ、それは後に水田へと活用されていきます。
このように自然堤防という壁が居住スペースと後背湿地を作るため、ヲロチとスサノヲの共通点に「領域を作る」を入れたというわけです。
最後【赤2-4】は、ヲロチがまとっている植物が建築材料や酒造りの材料になるため、共通点「知恵者」の列に配置しました。
【スサノヲ側】後に生まれたもの(大)
今度はスサノヲ側に移って、同じく「後に生まれたもの(大)」を見ていきます。

下の【青2-1】において、彼が醸造を指示したお酒は八塩折の酒と言い、それはハチミツのように甘い貴醸酒やデザート酒です。
次に【青2-2】は、人工堤防や自然堤防が出来ることによって居住スペースが確保されるため、そこにスサノヲは稲田宮を建てたものと思われます。また、ヲロチが作る後背湿地も水田に活用されてきた歴史があるため、スサノヲも、壁は壁でも、水田の壁(あぜ道)を作ることでより強固な水田を作ったと思われます。
つづいて【青2-3】は、水田を作るということは稲の収穫が予想されます。ただ、ヲロチ神話では稲の収穫までは語られていないので、カッコ書きにしました。
最後【青2-4】は、現時点ではまだ見つけられていないので空欄です。
【ヲロチ側】後に生まれたもの(小)
さて、またまたヲロチ側に戻って、最後の列を見ていきます。ここは「後に生まれたもの(小)」ということで、ヲロチ退治後に誕生したサイズが小さめのものを並べていきます。

まず【赤3-1】は八重の花で、スサノヲが八重垣の歌を通して「八重の花びらを作ろう」と歌っていることから、自然界に八重の花が誕生したと思われます。また、この八重の花は中性的で魅力的な男性を表す隠喩でもあるため、八重の花の出現がスサノヲをプレイボーイ化させた根本原因となります。
次に【赤3-2】は、穏やかな川や清流は水草を生み、水草は水棲生物が卵を生む場所(産卵床)になります。それを水中での出来事とすると、陸上でも同じく植物界における花の受粉が行われ、それをスサノヲとクシナダヒメの神生みが隠喩的に表現していました。
そして【3-1】が八重の花だったので、【3-2】は一重の花での出来事ということになります。
つづいて一個飛んで【赤3-4】は、スサノヲが作らせた八塩折の酒は花の蜜の隠喩なので、ここは花蜜になります。
このように、ヲロチが退治された後は、自然界において大小さまざまなサイズのものが誕生していることがわかりました。
【スサノヲ側】後に生まれたもの(小)
それでは最後にスサノヲ側の「後に生まれたもの(小)」を見ていきます。

ここでは女性の身体に関するものを読み取ることができました。身体は一見すると自然側に位置していそうですが、身体は秩序をもっているので文化側に配置しました。
【青3-2】から見ていくと、女性の子宮は稲田宮(神社)や水田と本質を同じくします。
次に【青3-3】は、女性の陰毛は隠喩表現では水草となり、また人間の女性における性交、妊娠、出産はクシナダヒメの神生みに該当します。
この【3-3】と自然側の【3-2】は同じ性愛という本質を持っていて、性愛は男女の感情が複雑に絡み合うものなので、二列目はそのような背景を持つものがまとまっている形になります。

以上がヲロチとスサノヲの特徴を元にまとめた、ヲロチ神話の全体像になります。
補足
ここからは、先ほどのまとめで漏れ落ちてしまったことを補足したいと思います。
【補足①】季節の誕生について
まず【赤2-1】ヲロチ退治をすることで山脈が誕生したわけですが、山は季節を生み、物語の中でも春から夏が生じていることが読み取れました。また、季節の移り変わりは心の移り変わりの隠喩にもなるため、それがスサノヲに浮気心を生じさせたと考えることもできるなと思いました。

【補足②】堤防建設におけるインフラ整備について
次に、スサノヲ側の【青1-2】堤防建設はインフラ整備も含んでいて、それは堤防を踏み固めるために始まった花見や水防祈願祭という形で読み取ることができました。

【補足③】草なぎの太刀について
次に【青2-3】稲の収穫に関連するものとして、草なぎの太刀が挙げられ、ヲロチを倒したとき出てきた草なぎの太刀は、穀物を刈るときに用いる道具だと思われます。

また、古代の風習を参考にすると、それは女性の陰毛をカットする道具という可能性も考えられるなと思います。というのも、おさらいになりますが、女性の陰毛は霊的なパワーを持っていて、お守りとして持ちあるく風習が昔からあるからです。
【補足④】稲田宮須賀の八耳神について
最後に【青2-2】稲田宮が創建されると同時に、足名椎は稲田宮主須賀の八耳神に改名しましたが、八つの耳は花びらのことだと私は考えています。花は聴覚をもっているからです。ですから、彼の改名は自然界における花びらの出現を意味するのではないかなと思います。よって、それが空欄になっていた【赤3-3】に入ります。

以上が補足についてのお話でした。
おわりに
今日はヲロチ神話の総括前編として、ヲロチとスサノヲの特徴を対比させながらこれまで解説してきた内容をまとめました。

このようにキレイに整理できると、本当に古事記は綿密な構造のもとに構成されているんだなということが改めてわかります。しかも、ヲロチとスサノヲが鏡のように反転している点も面白いですよね。
空欄の部分が何個かありますが、そこは私が読み取れなかった部分なので、いつかここも埋められたらいいなと思っています。
次回は総括後編として、ヲロチ神話を深層心理学の観点から見たとき見えてくる神々の成長物語についてお話したいと思います。

それでは今日はここまでです。
ご視聴いただきまして、ありがとうございました。
また次回もぜひ聴いてくださいね。
それではまたお会いしましょう!バイバイ!
