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古事記☆新解釈【25】金属三きょうだい!金属の性質から読み解くアマテラス、ツクヨミ、スサノヲの特徴/三貴子誕生②

三貴子誕生②アイキャッチ 新解釈『古事記』
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本日のトーク内容

以下の内容は、放送内容を加筆修正しています。

皆さんこんにちは、natanです。さあ、始まりました「ろじろじラジオチャンネル」。本日もよろしくお願いします。

前回は、イザナキがアマテラスに授けた首飾り、御倉板擧の神を通して、胞衣信仰とヒルコに関するお話をしました。今回は、アマテラス、ツクヨミ、スサノヲはどういう特徴を持った神なのかについて、私なりの考えをお話してみたいと思います。

前回読み下し文と現代語訳は読み上げたので、今回はスライド表示のみとさせていただきます。トーク内容のチャプター一覧、参考文献はチャンネル概要欄に記載しています。

古事記「三貴子誕生①-4」(原文/読み下し文/現代語訳)

解説

三貴子は三位一体構造

禊の終盤に、イザナキはアマテラス、ツクヨミ、スサノヲの三柱を得ました。これら神々を構造で整理してみると、三位一体になると私は考えています。左右にアマテラスとツクヨミ、その中央にスサノヲがいるという構成です。たぶん、この裏にはヒルコがいるので、実際は四位一体だと思われますが、話が煩雑になってしまうので、今回は三位一体でお話を進めますね。

三貴子の三位一体構造①

この図を見て、「あれ?アマテラスが中央じゃないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。アマテラスが中央でも別に問題ありません。この配置は、物語をどう読んでいきたいかで変わるからです。私は、謎が多いスサノヲとツクヨミを紐解いていきたいので、このような配置にしてみました。この配置の理由も、お話後半で詳しく触れますね。

まずはざっくりと神々の特徴を整理していきましょう。

左目から生まれたアマテラスは、ご存知の通り、太陽を象徴した女神であり、日本の最高神です。世界の神話において、太陽神は男神が一般的ですが、日本においては女神となっています。

一方、右目から生まれたツクヨミは、月を象徴した神様で、性別は不明。私は、男神かもしれないと考えています。その理由は後日触れますね。ツクヨミはこのシーンで登場して以来、二度と出てこない不思議な神様です。だから、その動向も不明です。

最後に、鼻から生まれたスサノヲは、イザナキから「海原を治めよ」と言われているので、海に関する神だと思われます。また、鼻ということは風にも関係していて、「建速」と言われていることから推測するに、それは暴風レベルではないかなと考えます。そして、男神でだいぶやんちゃな性格をした神様です。

金属から見る三貴子の性質

さて、このように、アマテラスは太陽、ツクヨミは月、スサノヲは海や風を象徴した神というのが一般的な解釈だと思われますが、私はこれとは別の解釈も持っています。というのも、古事記は大地創造に関する話をしていて、神々を太陽や月としてしまうと、それは宇宙空間の話になってしまうからです。古事記の世界観、そして古代日本人の信仰を考えると、この神々は大地に関する神として捉える必要があると考えます。

では、この神々は大地の一体何を象徴しているのでしょうか?象徴は複数あるのですが、その中でも金属の性質が神々をよく表しているようなので、今回は金属でまとめてみました。

三貴子の三位一体構造②

右側からいくと、アマテラスは金です。原子番号79のAu金です。太陽神が金(ゴールド)だというのは、誰もが納得することだと思います。エジプト神話もそうですし、錬金術師の金の記号「⦿」は世界を照らす太陽を表したものだそうです。

次に、ツクヨミは原子番号47の銀(Ag)。スサノヲは、原子番号80の水銀(Hg)、または原子番号29の銅(Cu)だと考えます。銅にはてなマークを付けたのですが、その理由は後半で触れますね。この二つの金属の中で、スサノヲの特徴を最も表しているのが水銀です。

三貴子が金属を象徴する根拠①/洞窟や坑道

細かい解説は後に回すとして、先に、神々がこれら金属を象徴しているとする根拠からお話したいと思います。イザナキの禊を振り返ったとき、そこで生まれた神々から鉱石が集まっている鉱床や鉱石採掘のための坑道、金の採掘といった要素が読み取れたからです。

鉱石の採掘という視点で禊シーンを見てみると、たとえば、イザナキが禊をするために投げ捨てたものから誕生した神々に、道の長乳齒神や時量師神がいましたが、道の長乳齒神からは鍾乳石、時量師神からはクォーツ時計として時を刻む水晶、つまり石英の要素を感じ取ることができました。

また、金は石英に富んだ鉱脈の中に生まれるそうで、時量師神は身体器官でいえば心臓を象徴していると思われ、今回その鼓動を「脈」という漢字に置き換えてみると、シーン全体が鉱脈の様相を呈してくるんですね。ですから、投げ捨てたものから誕生した神々は、洞窟や坑道のような場所も象徴しているだろうと私は考えました。

さらに、禊シーンは金の採掘も象徴的に語っているようで、その採掘方法とは、金鉱石を砂状になるまで打ち砕いて、傾斜している樋に水と一緒に流して砂と金に分けるというもの。この砕いて流すという作業が、イザナキが川に崩れ落ちながら潜って禊をしたという部分と合致するなと思いました。彼が崩れ落ちながら潜ったそのわけは、金の採掘方法を象徴的に語るためだったのかもしれません。

そして、その砂と金を分けるための水量を調節する場所を「池」や「船」と呼ぶそうで、そういった場所を監督する存在が衝立船戸神なのだと思いました。

鉱石の採掘

三貴子が金属を象徴する根拠②/砂金採集

一方、砂金採集の場合は、比重の重い金は川底の岩盤の割れ目や淀み、水草の根元などに溜まるので、皿ですくい、それを前後左右に揺らして土砂を洗い流し、金だけを皿に残します。

皿を揺らすことが、イザナキが首飾りをゆらゆら揺らしたことと繋がりそうですし、また、その首飾りが御倉板擧の神という名前で、砂金採集においては金をすくい上げた神という感じで読むことができるなと思いました。そして、金を産出した鉱床、それが胞衣を象徴しているという感じ。

砂金採集

阿曇連の文章に書かれていること

さらに、この金を採集する川のことが、づみのむらじの文章内に記されていると私は思いました。ここは解説を保留にしていたところで、アマテラスたちが生まれる直前の文章になります。もう一度読み下し文と現代語訳を読み上げますね。

古事記「禊②-5」(原文/読み下し文/現代語訳)

此三柱綿津見神者 阿曇連等之祖神以伊都久神也
故阿曇連等者 其綿津見神之子 宇都志日金拆命之子孫也
其底筒之男命 中筒之男命 上筒之男命三柱神者 墨江之三前大神也

この三柱の綿津見神は、づみのむらじ祖神おやがみともちいつく神なり。
かれ、阿曇連等はその綿津見神の子、うつし金拆かなさくのみこと子孫うみのこなり。
その底筒の男命、中筒の男命、上筒の男命の三柱の神は、すみさきの大神なり。

この三柱の綿津見神は、阿曇連たちが祖先神として祀る神である。
そして、阿曇連たちは、その綿津見神の子、宇都志日金拆命の子孫である。
その底筒の男命、中筒の男命、上筒の男命の三柱の神は、墨江の岬の大神である。

ここを普通に読むと、阿曇連たちの祖先神は綿津見神で、阿曇連たちは宇都志日金拆命の子孫であるという話になっています。しかし、名前を分解して読んでみると、違ったことが読み取れるんですね。

阿曇連の「阿」は、川や山などの曲がったところ、寄りかかるの意。「曇」は曇っている、曇らすの意。「連」は連なっている、引き続き、しきりにの意。

また、宇都志日金拆命の「うつし」は葦原中国のこと。「日金拆」は金または金属をさく、分けるの意。金を採掘する職人と読めます。最後に、墨江の「墨」は濁っていること、黒い川のこと、「江」は長江など大きな川のこと、または海や湖が陸地に入りこんでいる所でもあり、そこに筒の男命たちが鎮座しているとなっています。

阿曇連

これらを抽象的に思考してみると、鉱床や金などを採集するときの濁った川や、そこで作業をしている人がいるというイメージが上がってきます。今、アマゾン川でゴールドラッシュが起こっているそうですが、そのアマゾン川の濁った姿をイメージしてみるとわかりやすいかもしれません。

また、行き過ぎた砂金採集は川の形を変形させてしまい、災害を発生させる危険性もあるそうなので、そうならないよう守り神として筒の男命の三柱がいると読むこともできるなと思いました。このような過程を経て、金属を象徴するアマテラスたちは誕生したのだと考えます。

アマテラスについて

金はとても重い貴金属で、この重さがアマテラスの特徴を語る上で欠かせないポイントだと私は考えています。金はその価値の高さだけに目が行きがちですが、それ以外に「重い」というのも金の特徴で、興味深いことに、今後のストーリーにおいて、アマテラスにも受動性と不動性が感じられるんですね。

彼女の受動性と不動性の本質は金の重さにある、のかもしれないと私は考えているので、アマテラスを考察する際の重要なポイントとして「重さ」というのも含めて、今後考察していきたいなと思っています。

スサノヲについて

辰砂(水銀)の神

さて、金属の性質が神の性質でもあるとするならば、他の二柱の神はどういった特徴を持った神だと言えるでしょうか?

スサノヲから見ていくと、私はスサノヲを水銀としましたが、水銀は辰砂しんしゃ(別名:丹生にう)と呼ばれる鉱物から採取されます。この辰砂は赤い色をしていて、この赤色が硫化水銀だそうです。そして、辰砂のより上質なものを「しゅ」と呼ぶそうです。「しゅさ」、スサノヲの「すさ」はこえで訓むので「シュサノヲ」。この音から私は、彼を水銀の神と読み取りました。

水銀は唯一の液体金属で、防腐剤として古来より活用されてきました。遺跡から発掘されたものに赤色がついている場合、防腐剤として塗られた水銀の可能性が高いようです。

また、水銀は多くの金属と合金を作ることができるため、錬金術においては金を取り出す際のアマルガムとして用いられていたようです。アマルガムとは、金を溶かし込んだ水銀のことで、それを加熱すると、沸点の低い水銀が蒸発し、金だけが残ります。これは金メッキを作るときにも用いられる手法です。

水銀は猛毒で、蒸発したものを吸い込むと水俣病のような症状を引き起こします。先ほどお話した、ゴールドラッシュが起こっているアマゾン川流域でも、金の採掘に水銀が用いられ、今、ブラジルの水俣病が発生していると言われています。

今は猛毒と広く認知されている水銀ですが、昔は永遠の命を与えてくれるものと信じられていたようです。そのため、時の権力者は水銀を飲んで不老不死を得ようとしたと言われています。信じられないくらい危険な行為ですよね。

スサノヲについて①

猛毒という側面について

この水銀の猛毒性に関連した話として、イザナキが禊をするために訪れた竺紫日向の橘小門の阿波岐原を考察した際、「竺紫」という言葉から猛毒なトリカブトの要素を導きだしましたが、なぜ禊シーンに毒の要素が入り込んでくるのかというと、スサノヲに見られるように、禊で新しく誕生した神々はポジティブな面だけでなく、ネガティブな面も同時に持っているからだと思います。そのネガティブな面が死であり、それは母であるイザナミの要素でもあるので、両親の要素をしっかり継承しているということを語るために、「竺紫」つまり毒の要素が入っているのではないかなと考えます。

アマテラスの金だってそうですよね。金は人々の欲望を掻き立てますし、欲望が行き着く先は、古事記解説第19回でもお話したように、イザナミが住まう黄泉の国ですからね。

スサノヲについて④

混ぜる神

さて、お話戻りまして、錬金術師は「水銀はすべての金属の共通部分」と話していたそうです。水銀は合金を作るという特徴からもわかるように、さまざまな金属を混ぜることができるからです。そう、この「混ぜる」という特徴がスサノヲを語る上で重要なポイントになると考えます。

スサノヲの「すさ」はこえで訓むと言いましたが、朱砂という鉱物以外に、荒壁を作る際に混ぜ込む「荒すさ」としても読むことができます。荒壁は土壁の一種で、古来より日本の家づくりに用いられてきたものです。その壁を作るときつなぎとして用いるのが「荒すさ」と呼ばれる藁で、これを土に混ぜ込んで壁を作るんですね。

彼は後の場面で「八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣つくる その八重垣を」と歌いますが、八重垣と荒壁、何かしら共通点がありそうだなと私はにらんでいます。

さて、建速須佐の男命、荒ぶる神スサノヲというイメージは、水銀の猛毒性を考えると納得です。しかし、彼が任されている任務を考えると、彼の本質は凶暴性だけにあるのではなく、水銀と荒らすさに見られるように、混ぜること。これが彼の最大の特徴だと考えます。彼は混ぜる神なんですね。

スサノヲについて②

何を混ぜるかというと、アマテラスとツクヨミです。この両者は表と裏のような関係を持っているので、一緒に活動することはありません。その両者を混ぜながら、革新的なことを実行していくのがスサノヲだと私は考えています。両者を繋ぐ存在なので、私は彼を三位一体構造の真ん中に配置したんです。彼はアマテラスとツクヨミの間を行ったり来たりするからです。グルングルン混ぜるからこそ、そこに台風のような風が発生する、だから風の神でもあると考えると、しっくりきませんか?

また、スサノヲが象徴するもう一つの金属は銅と考えているのですが、その特徴は、電気をよく通すこと、熱をよく伝えること、耐食性があり加工がしやすいこと、大腸菌O-157に対する高い耐菌効果があることなどが挙げられます。このよく通す、よく伝えるという性質もスサノヲっぽいなと思うところではあるのですが、でも、銅はもしかしたらスサノヲより後の神の性質かもしれないとも思うので、銅は保留にしつつ、物語が進んでから再度考えてみたいと思います。

スサノヲについて③

ツクヨミについて

夜の食国とは

さて、最後はツクヨミについて。ツクヨミを銀とした理由はいろいろあって。一つは、銀という色が月に照らされた水面の色に似ていること。それはまるで夜の川のきらめきのようです。二つ目は古代エジプトでは「銀は月の影響によって成長する」と言われていたこと。三つ目は、金よりも後に銀が発見されたことなど、さまざまあります。

いろんな理由がある中で、私が興味を持ったのが、銀の持つ殺菌、抗菌作用でした。アリゾナ大学の研究によって、銀はほとんどの病原菌に対して殺菌効果があるとわかったそうです。

ツクヨミはイザナキから「夜の食国を統治せよ」と言われました。夜の食国はどこかというと、それは生物の腸内世界だと私は考えています。夜とは黄泉の国と同じく、体内の方向のことを指した言葉で、食国は食べる国なので、それらが指す場所が腸内世界だと思うからです。体内世界は夜のように暗く、その世界をほのかな明かりで照らすのが月、それがツクヨミという感じ。

また、黄泉の国では弱って傷ついたイザナミがいたわけですが、それは後に人間がかかる病気を象徴したもので、その病気を治すために活動していくのがツクヨミだとも考えています。そもそもツクヨミが今後一切出てこない理由は、この神はイザナミと同じ方向にいるからだと私は考えています。

栄養ある食事は、病気の回復や健康維持に欠かせない大切な薬でもあります。たとえば、日本食の代表格発酵食品は、日本人の健康を日々支えてくれています。発酵食品も菌の活動の賜であり、人体の腸内世界も同じく腸内細菌の活動の場です。食国の統治というのは、銀が象徴する殺菌、抗菌作用に見られるように、病気を治癒し健康を維持すること。菌の活動に見られるように美味しく健康的な食べ物を生み出すこと。そのような役目を担うのがツクヨミだと考えます。

銀以外に関しては、食国の「食」の字は、養うや育てるという意味も持っているので、ツクヨミは養育の神でもあるのかもしれません。

ツクヨミについて①

月へんではなくにくづきかも?

さて、このように考えてみると、一般的にツクヨミは月の神様だと言われていますが、古事記の身体宇宙論的世界観を考えると、月ではなく肉と捉えた方がいいのではないかなと思えてきます。どういうことかというと、肉というのは漢字の部首、にくづきのことです。

にくづきがつく漢字は、身体に関する言葉がほとんどです。このにくづきを統括するのがツクヨミなのではないかなと私は思うんです。ちなみに、月へんの場合、横棒がくっつかず隙間があいています。

原文では、ツクヨミはしっかりと月へんで書かれています。しかし、古事記における月がどこを照らすかを考えたとき、それは体内世界なので、ツクヨミは月の神ではあるけれど、統治するのは身体と考えた方が良さそうだなと私は思います。

この思考法でいくと、アマテラスも太陽神というよりは、漢字の日へんに関する神様として考えることができるかもしれません。日へんは太陽運行における日時の経過を意味したもので、それは昼のことでもあります。また、アマテラスはツクヨミとは反転した性質を持っているので、暗くてよく見えないツクヨミならば、アマテラスは明るくてよく見えるということ。哲学的な表現になりますが、観察者という位置にいるのかもしれません。さらに、ツクヨミの夜の世界は寝ることであるならば、逆にアマテラスの世界は目覚めているということ。

アマテラスが左目から生まれたのは、顕在化した意識で世界を見る神だからであり、ツクヨミが右目から生まれたのは、無意識の世界、または夢見の世界を司る神だからなのかもしれません。

ツクヨミについて②

ということで、以上が私が考えるアマテラス、ツクヨミ、スサノヲの特徴でした。今日は金属に焦点を当ててお話しましたが、これ以外にも神々はいろんな特徴を持っているので、それについては今後の解説の中で都度お話していきたいと思います。

natan
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それでは今日はここまでです。
ご視聴いただきまして、ありがとうございました。
また次回もぜひ聴いてくださいね。
それではまたお会いしましょう!バイバイ!

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