
私の宇宙からこんにちは、natanです。
今日は、ちょっとダークなお話です。
◎前回までのお話はこちら↓
書籍『ヴァギナ』の著者ナオミ・ウルフは、戦地におもむき、性的暴行を受けた何百人という女性たちと接してきました。
さらに、日常生活においても、何人かの性的暴力の被害にあった女性と出会ったそうです。
戦地での女性に対する暴行は、とてもじゃありませんがこのブログでは書けないくらい残虐です。
性的暴力というよりも、女性器の破壊を目的としたものだからです。
詳細を知りたい方は、書籍を買って読んでください…。
▼ 参考文献 ▼
以下の記事は、性別問わず、無意識(内なる私)の性質や他者性の特徴、他者と絆を育むために必要なコミュニケーション法が、女性器の性質に現れていると捉えながら読んでみてください。(性器は世界空間の構造的射影であり、それを象徴したものが人間の性器です。)
また、女性の心と体の特徴の把握として、文面そのままの意味で読みすすめても構いませんが、けっして性器信仰&女性優位として捉えないようにお気をつけください。
コスモ・ライフォロジーでは、性器を宇宙論として語っています。
性的暴力が女性に与える影響
著者は、ウィスコンシン大学マディソン校の神経学者として、めまいや耳鳴りなどの神経系の疾患を研究しているリッチモンド医師から、性的暴力が女性に与える影響について話す機会を得ました。
著者の実体験として、以前若い女性にリーダーシップを教えているウッドハル協会で、演説とプレゼンテーションのために「声を上げる」ことを教えていた時期がありました。

その講座では、話すときにいかに背筋を伸ばすか、さらに想像上の演壇で1メートル四方のスペースをいかに占有するかを教えていたそうです。
講座を開いていた10年間に、少数ですが、自分の足で立てない女性がいたそうです。
どんなに頑張っても、まっすぐに背筋を伸ばしてじっと立っていることができないのです。
体が左右にわずかに揺れてしまうのです。
また、姿勢を直してやろうとして肩をつかむとよろけてしまい、普通なら感じる抵抗がまったく感じられないとのこと。
こういう女性たちは、声もか細かったそうです。
喉頭が緊張して、子供のように甲高い声になるのです。
発声練習で喉と隔膜を広げようとすると、大抵二つのことが起きたそうです。
より自然で自信ありげな低い声になるのですが、少しするといきなり泣きだすのです。
さめざめと泣くだけ泣き、それから胸を張って「新しい」声を喉からしっかり出して演説の練習をうまく終えると、彼女たちは驚くほどガラリと変わったそうです。
顔が輝き、全身から光を発しているように見え、まるで「焦点があった」かのように、本来の自分を取りもどして生き生きとしたそうです。
このような症状を見せた女性たちは、子供の頃か思春期に、性的な暴行を受けたか、強姦されたことがあることを、著者はそのたびに知ったそうです。
性的暴力は女性から「立つ力」を奪う
この事例について、リッチモンド医師は、とても真面目な人で平衡感覚に異常がある女性患者には、過去に強姦や性的暴力をふるわれたことのある人が目立って多いと話します。
「押し倒され」ても抵抗できない患者も、高い比率で性的な暴行を受けたか、強姦された経験が過去にあることを発見したのです。
リッチモンド医師の患者には、「恐怖性姿勢めまい」という症状に困って、診察を受けにくる人がいるとのこと。
ストレスを感じるとめまいがしたり、あっけなく押し倒されてしまいます。
転換性歩行障害の女性もいて、これは身体的にはどこも悪いところはないのに、うまく歩けなくなる症状です。
さらに、これといった原因が見当たらないのにめまいがする「視性めまい」の人もいるそうです。
そのほか、性的な暴力を受けた経験のある人の症状には、つねに落下する感覚がしたり、朝に吐き気を感じたりするといったものもあるそうです。
これらの症状から導きだされることは、
性的暴力は女性の「自分の足でしっかり立つ」能力を奪う
ということ。
押してやると何度も転び、つかまえてあげないといけない。
体力も反射も身体機能も正常で、神経にも客観的な欠陥はなく、前庭神経の障害や脳の損傷もない。
こういう女性たちは神経系に問題があるわけではないのに、体はそうであるかのように反応するそうです。
さらに今度は、その女性たちに踏んばってみるよう指示をすれば、力いっぱい押しても岩のように動かないと言います。
つまりこの極端な反応は、
心と体のつながりの問題
なのです。
リッチモンド医師はこう言います。

わたしが医者で権威があるということが彼女たちに踏んばるのを「許す」のではないかと想像しています。
安定する能力はある。
「許しがあたえられれば」いいわけです。
指示がなければ押すと転んでしまう人たちなんですよ。
ヒステリー研究でわかったこと
じつはこの件に関して、精神分析でも同様のことがいわれています。
下記書籍『関係する女 所有する男』(斎藤環著)よりご紹介します。

▼ 参考文献 ▼
19世紀フランスの神経学者シャルコーは、パリのサルペトリエール病院でヒステリー患者の治療を行っていました。
彼は、神経学の視点からヒステリーを理解しようと試みていました。
シャルコーは、ヒステリー患者を催眠で治療できることに気づき、ヒステリーが身体ではなく精神から生じていることをはっきり示し、少ないながらも男性にもヒステリー患者がいることを見出しました。
それまでのヒステリーの「子宮の病」という古い考え方を一掃したのです。
シャルコーに学んだフロイトは、アンナ・Oというヒステリー患者の治療経験から、アンナ自身の示唆を受けて「精神分析」という技法を思いつきます。
フロイトはヒステリー研究で、ヒステリーが性的虐待のトラウマを抑圧することから生じてくることを明らかにしました。
つまり、フロイトはヒステリーを「表象による病気」、すなわちイメージによって起こる病気と考えたのです。
ヒステリーの症状が出ている部分は性感帯にあたる
ヒステリー患者は、かつて性的虐待によって生じた「自我が受け入れがたい表象」を抑圧して、無意識に閉じ込めようとする。
この抑圧されたイメージが、のちに身体的な症状として表現される、というのが精神分析によるヒステリーのメカニズムです。
フロイトはこういう転換症状(身体症状)の苦痛を、オーガズムと同じものであると考えました。
症状が出ている体の部分は、性感帯にあたるからです。
フロイトはさらに、ヒステリー者は体をエロス化しつつも、性器的な快楽は麻痺しているとも考えました。
セクシーなのに不感症、ということです。
ヒステリー者は、つねにこういう分裂を抱え込むことになるそうです。
そしてフロイトは、きわめて重大な二つの心理を見出します。
- ヒステリー者の症状=身体性には、脳神経系に還元されるような根拠がない
- ヒステリー者は、他者の欲望を刺激するような外見を持ちつつも、自らの欲望の追求を放棄するという分裂を抱えている
フロイトはもともと神経学者だったため、①の指摘には説得力があります。
かつて、ヒステリーを起こす女性は魔女だとして、「魔女狩り」によって多くの女性が処刑された出来事がありました。
このヒステリーも、すべてではないにしろ、女性が幼少期や思春期に性的暴行を受けた結果の症状であるとするならば、こんなに酷い話はないと思います。
書籍『関係する女 所有する男』ではこのあと、ジェンダーの問題に触れていくので、この記事では一旦ここで、このお話を終わりますね。
ヒステリーの症状や、フロイトやユングが活躍した時代を知るために参考になる映画があるので、ご興味ある方は見てみてください。
性的暴力は慢性病の原因にもなる
アメリカでは、女性の5人に1人が性的な暴行を受けたことがあり、その後生じた健康上の問題を数多く報告しています。
国立司法研究所と国防総省による「近親者と性暴力に関する全国調査(NISVS)」では16,507人の成人が回答を寄せ、女性の1/3が強姦、ストーキング、暴力の被害にあったことがあると証言しています。
性暴力、強姦、ストーカーの被害にあったと答えた女性の大多数が、PTSDの症状があると報告しています。
そのほか、暴行された女性はそうでない女性よりも、喘息、糖尿病、過敏性腸症候群、頭痛、慢性痛、睡眠困難、運動障害、その他身体的な健康障害、精神的な健康障害の率が高いことがわかりました。
一度でも性的暴力をふるわれると、それが一見無関係な慢性病の原因になることを示しています。
まとめ
性的暴力は、経験がない女性たちにとっても、想像しただけで夜も眠れなくなるくらいの恐怖感があります。
私は映画などでサラッとそういうシーンがあるだけで、脳内にその映像が貼りついて、数日間そのシーンに苦しみます。
本能的に怖いのです。
暴力は女性から「自分の足でしっかり立つ」能力を奪う。
そして、慢性的に生涯にわたるかもしれない体の変調を強いることにもなる。
男性側の快楽によって、女性の一生が奪われる。
そのことの重さをしっかり理解できるようになるためには、やはり性教育からはじまり、子供が安心して成長できる家庭作り、そして心の問題解決、社会全体の取り組みが必要だなと思います。