私の宇宙からこんにちは、natanです。
このページでは、私が運営しているYoutube「ろじろじラジオチャンネル」第35回放送時のトーク内容全文をご紹介します。
本日のトーク内容
自我意識の重要性について
さあ、始まりました「ろじろじラジオチャンネル」。本日もよろしくお願いします。
ここ最近は「無意識を知っていこう」「無意識への感受性を上げていこう」ということで、ユング心理学をベースに、無意識に関するお話をしています。
ヌーソロジーでは「無意識の顕在化」を目指しています。私はこれを「魂の霊的出産」と表現しています。
私の見解としては、無意識の顕在化を目指す前に、まずは既存の自我意識と無意識を霊的出産ができるくらいにまで育てないといけないと考えています。未熟な意識、未熟な魂のままでは、シュタイナーの言葉を借りるならば、魂が「霊的流産」をしてしまうからです。
この視点に立って現代人、主に日本人の意識を見てみると、多くの人の意識はまだまだ霊的出産に到れるほど育っていないと感じます。
これまでもお話してきたように、日本人は西洋人と違って、無意識との接続がもともと強いです。無意識との接続が強いことは霊的には良いことと感じるかもしれませんが、意識成長の観点から言うと、無自覚の状態で無意識とつながっていることは必ずしも良いことではないと考えます。
スピリチュアルや精神世界は、無意識の世界に憧れを抱く傾向が強く、全体性への回帰としてのワンネスが好まれ、自我意識はないがしろにされる傾向にあると感じます。
歴史学者は「未来を知りたければ過去を知るとよい」「歴史を学ぶことで今、そして未来がわかる」というように、歴史を知ること、そしてそこから学ぶことを通して現状を理解し、大きな視点でより良い未来の方向性を見出すことができると言います。
意識進化も同様に、正しい意識進化の方向性を見据えるためには、意識の歴史を知っていくことが大切だと私は考えます。その歴史を知ることで、私がお話している無意識への感受性を上げること、そして自我意識は本当はとても大切なものなのだということが、皆さんにもおわかりいただけると思います。
というわけで、今回からユングのお弟子さんであるエーリッヒ・ノイマンの著書『意識の起源史』そして『グレートマザー』、さらにはジュリアン・ジェインズの書籍『神々の沈黙』を参考に、意識の歴史についてお話していきたいと思います。
シンボル「ウロボロスの蛇」について
シンボルとは
ヌーソロジーでは宇宙を表すシンボルとして「ウロボロスの蛇」を用いています。ここで少し、私なりのシンボルの解釈についてお話したいと思います。
シンボルとは「象徴」や「記号」を意味するものです。古代人は現代人のように文字を読み取って世界や物事を認識し理解していたのではなく、シンボルによってそこからいろんなことを感じ取っていたようです。
古代文明の時代、さらには3世紀から4世紀に渡って勢力をもったグノーシス思想、そして日本の古神道などでは、宇宙をウロボロスの蛇を用いて描写していました。そのウロボロスの蛇というシンボルに含まれる意味は、宇宙の循環性、始原性、無限性、完全性、永続性などです。
さて、ここで注目していただきたいことがあります。今、宇宙の意味を表すだけでも、五つの言葉が必要になるということ。しかし、ウロボロスの蛇というシンボルを用いると、それらすべての意味を一瞬にして表現することができます。
それだけでなく、蛇というモチーフは女性原理や両性具有などの意味も持ち、神に仕える神聖な存在である反面、敵を絞め殺したり、自分より大きい相手を呑み込むなどの怖い側面も併せ持っています。ですから、シンボルというものは、いろんな意味を一瞬で理解するだけでなく、神聖さや恐怖など物事の二面性を表現したり、さらには受け取る側の感性をも刺激したりする感性言語でもあると考えます。
蛇が嫌いな人は蛇の絵を見ただけで、ゾゾゾ―っとするはずです。
それがまさにシンボルの効果です。
「未分化」について
そして、ここで取り上げているウロボロスの蛇というシンボルは、宇宙を描写するだけでなく、人間の意識進化、意識発達においても同様に用いられます。
ウロボロスの蛇は、循環性、始原性、永続性、無限性、完全性を表すものですが、今回はもう一つ大切な意味を追加したいと思います。それは「未分化」です。この「未分化」が、意識進化、意識発達の過程を理解していく上でとても重要な意味をもつので、ここからは「未分化」に着目して話を進めていきたいと思います。
この「未分化」は意識発達において何を意味しているかというと、赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる胎児期、そして生まれてからもまだお母さんの保護を必要としている乳幼児期において、赤ちゃんの意識はお母さんと一体化しています。つまり、赤ちゃんの意識はまだ自立しておらず、お母さんの意識と未分化の状態にある、ということです。これを「ウロボロス状態」と表現します。
赤ちゃんに自我意識はまだ芽生えていません。自我意識の萌芽は無意識の中に眠ったままになっています。
さらにウロボロス内は自給自足の世界なので、赤ちゃんは自ら働きかけをすることなく、お母さんからたっぷりの栄養を与えてもらいながら育つことができます。よって、赤ちゃんにとってお母さんと意識が一体化している時期は、赤ちゃんにとって絶対的に至福の時期です。楽園状態です。
ノイマンは胎児の頃の状態を「内ー子宮的胎児期」と呼び、乳幼児の頃を「後ー子宮的胎児期」と呼んでいます。赤ちゃんが生まれたとしても、生命維持がお母さんに委ねられている時期は、胎児期と変わらないという意味です。
このときのウロボロスは、たとえるならば、眠る赤ちゃんの周りを大車輪や大きな歯車のように刻々と動き続ける存在であり、赤ちゃんの生命を支配している状態、そのような生命維持装置として稼働しているイメージです。
赤ちゃんとお母さんの意識が一体化しているとは、具体的にどういうことを指すのか、例として私が友人から聞いた話をお話したいと思います。
私の友人は双子の女の子のママさんなのですが、彼女は産後鬱になり、出産してからとても大変な経験をしたと話してくれました。後にうつから回復し、子どもが3歳になったころ、彼女は昔を思い出して「◯◯ちゃんは小さい頃よく泣いていたんだよ」と子どもに話したそうです。すると子どもは「泣いてないよ、泣いてたのはママだよ」と言ったそうです。
お母さんの産後鬱でつらく悲しい気持ちが赤ちゃんに伝播したといいますか、伝播というよりは意識が未分化な状態なので、赤ちゃんの方がお母さんの感情を代理表現していたという感じでしょうか。
ノイマンも「幼児期において、幼児は両親の無意識的な心理の一部である」と述べているので、友人の話は母子の意識の一体性を理解する上でとても参考になる話だと思いました。
人類の意識の歴史
グレートマザーとの一体
前置きが長くなりましたが、ここからが今日の本題です。
「個体発生は系統発生を繰り返す」と言われるように、人間一人の意識発達は人類全体がたどった意識発達のパターンを繰り返しています。というわけで、人類の意識発達の歴史を見ていきたいと思います。
人類の意識も人間の胎児同様に、その成長のはじまりは大いなる母、グレートマザーとの一体から始まります。
河合隼雄先生は、人間自我の萌芽を内包した無意識が誕生した瞬間、宇宙はそれを育てる力として母性原理の力、つまりグレートマザーを生み出すとおっしゃっていました。
グレートマザーは人類全体を育てる超巨大な原始ウロボロスのイメージです。
「二分心」について
ジュリアン・ジェインズの書籍『神々の沈黙』を参考にすると、古代人たちは顕在意識や自我意識というものを持っておらず、無意識の中で生きていたと言われています。
そして、古代人は「二分心」と呼ばれる二つの心を持っていたとジェインズは話します。この二分心の話を脳に置き換えると、私たち現代人の右脳と左脳はどちらも自分の脳であり、それらが連携することで活動していますが、古代人の場合、右脳と左脳はまったく別ものだったそうです。
右脳には神が住んでいて、その神の声の指示通りに左脳側である人間は活動していた。つまり、人間一人の中にさまざまな神が住んでいて、神々の操り人形のように人間は生かされていたようです。
神とは元型のこと
ユングやノイマンも似たような考察をしていて、古代人は無意識的に生きており、ジェインズで言うところの「神」をユング心理学では「元型」と表現するのですが、古代人はさまざまな元型の作用のままに生かされていたと言います。
元型というのは、現代の私たちにおいては、集合的無意識内で働く心のパターンや行動パターンのことを指すのですが、古代においてそれは神々そのものだったそうです。
古代人が生きた無意識的な世界はどういう世界かというと、ノイマンは私たちが見る夢の中の世界や空想の世界にそれを見いだせると言います。
夢の中の世界は、私たち一人ひとりの無意識の世界です。その世界は時間や場所の制約もなく、あらゆるものが変幻自在で、奇妙な存在も出現する世界です。さらに、夢の中の世界に入ってしまうと能動的に動くことはできず、夢の中の物語を強制的にそして受動的に体験させられますよね。古代人の生きた世界はそういう世界だったようです。
そのような無意識の世界で古代人は生き、そして古代人をとある物語の文脈の中で生かしていたものがジェインズでいう「神」、そしてユング心理学でいう「元型」です。
楽園の時代
人間にはさまざまな心の働きがあるように、元型にもさまざまな種類があります。このさまざまな元型を未分化の状態でひとまとめにして持っているのが原始ウロボロスです。原始ウロボロスは元型の親玉みたいなイメージなので、それをとくに「原元型」と呼びます。
このように、神の声にただ従って生きる時代というのは、人間にとって苦悩はないので、旧約聖書においてその時代は「楽園」として描写されています。苦悩というのは、自我が生まれることで発生します。自我のない、母の胎内でまどろむ、母にすべてを委ねている胎児のような時代は、まさに楽園状態です。
ジェインズによると、このような時代は紀元前9000年~紀元前2000年紀にかけて起こったとのこと。
人類の意識はまだ生まれて間もない
この時代の人類の意識は、まだまだグレートマザーの中で生かされているので、ウロボロスの支配を受けています。未分化を表すウロボロスのシンボルは、あらゆるものが分かれていない、ある意味一元的な世界です。
グレートマザーという言葉から母親を思い浮かべてしまいますが、じつはグレートマザーという原元型には、世界両親と言われる「父なる天」と「母なる大地」も未分化な状態で存在しています。表現としては「父と母は抱き合った状態で存在している」と神話で描かれていたりもしています。ですから、原元型である原始ウロボロスそしてグレートマザーの時代は、あらゆるものが未分化な混沌とした世界でもあります。
こうした時代を経て、次第に人間に意識が芽生え始めます。意識といっても現代人のようなはっきりとした意識ではなく、乳幼児の意識のような、または夢の中の世界から目覚めたばかりのような、ぼんやりとした原初の意識だと考えます。
ここで驚きなのは、人類に意識が誕生したのは、じつは今からたった約3000年前だったということ。それまで人類は意識を持っていなかったそうです。ここに気づいたジュリアン・ジェインズはすごいと思います。
人類の歴史がひっくり返りますね!
無意識の世界は暗黒世界と表現されますが、その反対に意識の世界は光の世界と表現されます。意識の芽生え、それが光です。
「混沌とした世界に一筋の光が出現する。そして世界は天と地に分かれた。」
世界各地に存在する創生神話は、その始まりはみな同じです。宇宙誕生の瞬間というのは、人間に意識が誕生した瞬間です。そして、原始ウロボロス内で抱き合っていた父と母はここで分離します。天と地の出現は世界両親の出現であり、天が父、大地が母です。ここから人類の壮大な意識進化の旅が始まることになります。
次回も引き続き、この件についてお話していきたいと思います。
それでは今日はここまでです。
ご視聴いただきまして、ありがとうございました。
また次回もぜひ聴いてくださいね。
それではまたお会いしましょう!バイバイ!