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古事記☆新解釈【35】うけい②/アマテラスの勾玉から生まれた五柱の男神

うけい②アイキャッチ 新解釈『古事記』
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本日のトーク内容

以下の内容は、放送内容を加筆修正しています。

皆さんこんにちは、natanです。さあ、始まりました「ろじろじラジオチャンネル」。本日もよろしくお願いします。

前回はうけいにおいて、アマテラスを先手にして、スサノヲの十拳劒から生まれた三女神についてのお話をしました。今回は、アマテラスが身につけているみすまるの珠から生まれた男神五柱について解説したいと思います。

まずはいつものように、読み下し文、現代語訳を読み上げます。声をもって訓む部分は赤字で表記し、特殊な訓読みは原文の横に訓み方を記載しています。トーク内容のチャプター一覧、参考文献はチャンネル概要欄に記載しています。

【1】原文/読み下し文/現代語訳

古事記「うけい②-1」(原文/読み下し文/現代語訳)

須佐之男命 乞度天照大御神所纏左御美豆良八尺勾璁之五百津之美須麻流珠而 奴那登母母由良迩 振滌天之眞名井而 佐賀美迩迦美而 於吹棄氣吹之挾霧所成神御名 正勝吾勝勝速日天之忍穗耳命 亦乞度所纏右御美豆良之珠而 佐賀美迩迦美而 於吹棄氣吹之挾霧所成神御名 天之菩卑能

すさの男命、天照大御神の左のみづらにかせる八尺勾璁やさかまがたま五百津いほつみすまるたまわたして、ぬなとももゆらに天の真名井に振りすすぎて、さがみにかみて吹きつる気吹いぶき挾霧さぎりに成れる神の御名みなは、正勝吾勝勝速日天まさかつあかつかちはやひあめ忍穂耳おしほみみ命。また右のみづらに纏かせる珠を乞ひ度して、さがみにかみて吹き棄つる気吹の挾霧に成れる神の御名は、天のほひの命。

古事記「うけい②-2」(原文/読み下し文/現代語訳)

亦乞度所纏御縵之珠而 佐賀美迩迦美而 於吹棄氣吹之挾霧所成神御名 天津日子根命 又乞度所纏左御手之珠而 佐賀美迩迦美而 於吹棄氣吹之挾霧所成神御名 活津日子根命 亦乞度所纏右御手之珠而 佐賀美迩迦美而 於吹棄氣吹之挾霧所成神御名 熊野久須毘命 幷五柱

また御縵みかずらに纏かせる珠を乞ひ度して、さがみにかみて吹き棄つる気吹の挾霧に成れる神の御名は、天津日子根あまつひこね命。また左の御手に纏かせる珠を乞ひ度して、さがみにかみて吹き棄つる気吹の挾霧に成れる神の御名は、活津日子根いくつひこね命。また右の御手に纏かせる珠を乞ひ度して、さがみにかみて吹き棄つる気吹の挾霧に成れる神の御名は、熊野くすび命。あはせて五柱いつはしらの神。

古事記「うけい②-3」(原文/読み下し文/現代語訳)

須佐の男命は、天照大御神が左のみづらに巻いている大きな勾玉をたくさん連ねた玉飾りを乞い、天照大御神がそれを渡すと、玉の音もさやかに天の真名井で振り洗い、噛みに噛んで吐き出した、その息吹の霧に成った神の名は、正勝吾勝勝速日天の忍穂耳命。
また、右のみづらに巻いている珠を受け取り、噛みに噛んで吐き出した、その息吹の霧に成った神の名は、天の菩卑能命。
また髪飾りに巻いている珠を受け取り、噛みに噛んで吐き出した、その息吹の霧に成った神の名は、天津日子根命。
また左手に巻いている珠を受け取り、噛みに噛んで吐き出した、その息吹の霧に成った神の名は、活津日子根命。
また右手に巻いている珠を受け取り、噛みに噛んで吐き出した、その息吹の霧に成った神の名は、熊野久須毘命の計五柱の神である。

【2】原文/読み下し文/現代語訳

古事記「うけい②-4」(原文/読み下し文/現代語訳)

於是天照大御神 告速須佐之男命 是後所生五柱男子者 物實因我物所成 故自吾子也 先所生之三柱女子者 物實因汝物所成 故乃汝子也 如此詔別也

ここに天照大御神、速すさの男命にげたまひしく、「こののちれし五柱の男子をのこごは、物實我ものざねあが物によりて成れり。故自かれおのずかが子ぞ。先に生れし三柱の女子をみなごは、物實いましが物によりて成れり。故、すなはち汝が子ぞ」。かくわけけたまひき。

すると天照大御神は、「後に生まれた五柱の男神は、我が物から成ったのだから私の子である。先に生まれた三柱の女神は、お前の物から成ったのだからお前の子である」と須佐の男命に告げられ、子を別けられた。

【3】原文/読み下し文/現代語訳

古事記「うけい②-5」(原文/読み下し文/現代語訳)

故其先所生之神 多紀理毘賣命者 坐胸形之奥津宮 次市寸嶋比賣命者坐胸形之中津宮 次田寸津比賣命者坐胸形之邊津宮 此三柱神者 胸形君等之以伊都久三前大神者也
故此後所生五柱子之中 天菩比命之子 建比良鳥命 此出雲國造 无邪志國造 上菟上國造 下菟上國造 伊自牟國造 津嶋縣直 遠江國造等之祖也
次天津日子根命者 凡川内國造 額田部湯坐連 茨木國造 倭田中直 山代國造 馬來田國造 道尻岐閇國造 周芳國造 倭淹知造 高市縣主 蒲生稻寸 三枝部造等之祖也

かれその先にれし神、たきりびめ命は胸形むなかた奥津宮おきつみやす。次に市寸嶋比売いちきしまひめ命は、胸形の中津宮に坐す。次に田寸津比売たきつひめ命は、胸形の津宮に坐す。この三柱の神は、胸形君等むなかたのきみらがもちいつく三前みさきの大神なり。
故こののちに生れし五柱の子の中に、天菩比命の子、建比良鳥たけひらとり命……こは出雲國造いづものくにのみやつこ无邪志むざし國造、上菟上かみつうなかみ國造、下菟上しもつうなかみ國造、伊自牟いじむ國造、津嶋縣直つしまのあがたのあたひ遠江とほつあふみ國造おやなり。
次に天津日子根命は……凡川内おほしかふち國造、額田部湯坐連ぬかたべのゆゑのむらじ茨木いばらき國造、倭田中直やまとたなかのあたひ山代やましろ國造、馬來田うまくた國造、道尻岐閇みちしりきへ國造、周芳すは國造、倭淹知やまとあむち造、高市縣主たけちのあがたぬし蒲生稻寸かまふのいなき三枝部さきくさべ造等が祖なり。

古事記「うけい②-6」(原文/読み下し文/現代語訳)

なお、先に生まれた神、多紀理毘売命は、胸形の奥津宮に鎮座し、市寸嶋比売命は、胸形の中津宮に鎮座、田寸津比売命は、胸形の辺津宮に鎮座されている。この三柱の神は、胸形君らが祀っている岬の大神である。
そして、この後に生まれた五柱の男子のうち、天菩比命の子は建比良鳥命、(これは出雲國造、无邪志國造、上菟上國造、下菟上國造、伊自牟國造、津嶋縣直、遠江國造らの祖先である)。
次に、天津日子根命は、(凡川内國造、額田部湯坐連、茨木國造、倭田中直、山代國造、馬來田國造、道尻岐閇國造、周芳國造、倭淹知造、高市縣主、蒲生稻寸、三枝部造らの祖先である)。

これが今日取り上げるシーンです。それでは早速解説に入りましょう。

解説

五柱の男神

うけいの番がスサノヲに回ってきたとき、彼はアマテラスが各部位に巻いているみすまるの珠を受け取り、それを噛みに噛んでフッと吐き出して、五柱の男神を誕生させました。

上から、左みづらの大きな珠から正勝吾勝勝速日天の忍穗耳命。右みづらの珠(通常サイズ?)から天の菩卑能命。髪飾りの珠から天津日子根命。左手の珠から活津日子根命。右手の珠から熊野久須毘命となっています。グループで見てみると、①と②がみづら、④と⑤が手のグループに分けられます。また、グループは違えど、③天津日子根命と④活津日子根命は名前がどことなく似ている印象があります。

五柱の男神

現時点ではまだ、これら神々は抽象性が高いので、神の特徴に一柱ずつ言及することは難しいのですが、今言えることは、一番目に生まれた正勝吾勝勝速日天の忍穗耳命の「正勝吾勝」というのは、「正しく勝つ、私は勝つ」という意気込みを表したものと考えられます。この神は、のちにアマテラスから直々に「お前が葦原中国を統治しなさい」と命を受ける、貴い神様でもあります。ですから、天の忍穗耳命の「正勝吾勝」という強気な態度は、葦原中国を平定するときに必須となる凛々しい態度を表しているのかもしれません。

また、天の忍穗耳命と天の菩卑能命は共に髪を左右に束ねたみづらから誕生していて、天の忍穗耳命には「耳」の要素が入っていることも考えると、この神々は身体宇宙論でいえば、耳に関する神として考えることができるなと思いました。現に、葦原中国を平定する場面で、忍穗耳命は耳を傾けて葦原中国の様子を聞き取る姿が描かれています。みづらもその形は耳にソックリです。ですから、五柱の神は身体宇宙論で見た場合、頭や顔、または上半身に関する神々と言えるのではないかなと思います。

ということで、これら神々は葦原中国の平定や天孫降臨の場面で再登場してくることになります。

なぜアマテラスは子を分けたのか?

さて、うけいが終わると、アマテラスは「後に生まれた五柱の男神は、私の物から成ったのだから私の子である。先に生まれた三柱の女神は、お前の物から成ったのだからお前の子である」と言って、それぞれ子を分けました。自分の物から誕生したのが自分の子である、というのはもっともな話です。ただ、そうと決めた理由は他にもあると私は思います。

アマテラスが後に生まれた子が我が子だと言ったのは、構造上のルールが絡んでいるからです。父であるイザナキも、最後の最後に貴い神としてアマテラスたちを得ています。その場面を今度はアマテラスが反復しなければならないので、だから彼女も後に生まれた子が貴い、それが我が子だと判断したのだと思います。

また、アマテラスが子を分けたということも、彼女は父であるイザナキのお役目を継承しているようです。古事記解説第29回でお話したように、イザナキの「岐」の漢字は原義が「分ける」という意味で、彼はイザナミという大きな意味の塊を切り分けていく役目を持った神様でもありました。

今回、アマテラスもスサノヲから受け取った十拳劒を三つに折ったり、生まれた子を分けたりしているので、彼女は父の「分ける」という役目を継承する存在なのだと思われます。

宇宙卵の細胞分裂②

ということは反対に、スサノヲはイザナキの内面、心や感情などを継承する存在ということになるのかもしれません。より正確に言えば、父の内面を鏡として映し出す存在が母であるイザナミなので、スサノヲはイザナミと深く関係している神だと思われます。

三女神誕生に深く関わっている神

さて、このシーンは抽象性が高いので、現時点では他に言及できることがないので、最後に、三女神と五柱の男神たちがどういう神様なのかを説明した文章に触れて、今日のお話を終えたいと思います。

古事記によると、スサノヲの剣から生まれた多紀理毘売命は胸形の奥津宮に鎮座し、市寸嶋比売命は中津宮、多岐都比売命は邊津宮に鎮座しているとのこと。そして、この三女神は岬の大神だと言われています。

そこから推測するに、過去のシーンで同じく岬の大神と言われた、イザナキの禊で生まれた上津綿津見神、中津綿津見神、底津綿津見神の構造を継承している存在ではないかなと思います。岬に鎮座しているので、三女神も水に関する守り神という感じかもしれません。この女神たちは、宗像三女神とも呼ばれ、宗像大社を総本宮として、日本全国各地に祀られています。航海の安全を祈願する神様として祀られているというのは有名な話ですよね。

宗像三女神

男神と女神を比べてみた

この女神たちと男神たちを比べてみると、女神たちは島の神様、男神たちは通常の神様なので、これはイザナキとイザナミが国生みを行ったとき、最初に島を生み、次に神を生んだという展開をうけいの場面でも繰り返しているということがわかります。

女神と男神の対比

文章がおかしい…

古事記「うけい②-5」(原文/読み下し文/現代語訳)

さて、今度は男神の文章に注目してみましょう。天の菩卑能命には子どもがいるようで、その名前は建比良鳥命と言い、その子が出雲国造たちの祖先神で、天津日子根命も様々な国造の祖先神だと言われています。

でも、なんだかこの文章おかしくありませんか?というのは、多岐都比売命の漢字が変化していたり、天の菩卑能命は天菩比命になっていたりするからです。これまでの古事記には、このような書き換えは存在しませんでした。こえをもって訓む神の名前は、漢字より音の方を重視するとしても、漢字は、場面が変わらないかぎり、変えることなく同じものが使われていました。

また、天の菩卑能命に至っては天菩比命と「の」の字が消えてしまっています。古事記は「天の」と「の」がつく神様を構造の中心に据えて、とても神聖なものとして扱っているので、その「の」が消えてしまうだなんて、一体どういうことなのでしょうか?ちなみに、天菩比命は葦原中国を平定する場面で登場してくる神様なので、ちゃんと存在する神様ではあります。さらに、祖先神の説明文だけが異様に小さいのも気になりますよね。

「の」を中心に据える神々の構造図

そんなこんなで、この文章を受けて、私は一つの仮説を思いつきました。それは、「この文章は古事記のルールを知らない人が後から書き加えたものではないだろうか」というもの。古事記のルールを無視した書き方になっていると感じるからです。あくまでも私の勝手な推測ではありますが、古事記には原本がないので、誰かがこれを書き写したとき、この部分が欠損していたために、どうにかこうにか書き繋げたのかもしれないなと思いました。

祖先神の文章がおかしい

しかも、祖先神だという説明も、その子孫であるならば堂々と大きな字で書けばいいのに、小さく書くだなんてやっぱりおかしい…。さっき触れた、イザナキの禊で生まれた三柱の綿津見神は、誰の祖先神で、誰が子孫かということを大きな字で堂々と書いています。ですから、なんとなくですが、右側の文章を真似て、書き加えようとしたのかなと思いました。

祖先神の文章がおかしい②

ということで、男神の子孫を深ぼってみようと思ったのですが、どうも変な文章なので、一旦横に置いておこうと思います。物語が進んだとき、新しい気づきがあるかもしれないので、そのとき再考察してみたいと思います。

以上が、みすまるの珠から生まれた五柱の男神についてのお話でした。次回は、スサノヲが田畑で大暴れするシーンについて解説したいと思います。

natan
natan

それでは今日はここまでです。
ご視聴いただきまして、ありがとうございました。
また次回もぜひ聴いてくださいね。
それではまたお会いしましょう!バイバイ!

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