本日の講義内容
はじめに
皆さんこんにちは、natanです。この講座では、古事記の読解力を上げるために、日本の古代信仰について解説しています。今回は反転の法則と、その法則からわかる天皇が男系男子である理由について、私の考えをお話したいと思います。
読み方講座第10回で古神道と神道の違いについて触れた際、古神道が神道へ継承されるとき、それは反転を伴って起こったとお伝えしました。なぜ反転を伴うのか、そもそも反転とは何なのかについて今日はお話してみたいと思います。
反転とは?
私たちは、神様は自分たちの延長線上にいる存在だと考えています。しかし、神様は人間の延長線上にはいません。神様は人間と真反対の世界にいます。真反対というのは、人間界が表(陽)だとすると、神の世界は裏(陰)になるということです。
たとえば、人間界を太陽が明るく照らす昼の世界とするならば、神の世界は月が照らす夜の世界となります。また、人間界が意識がはっきりしている生の世界ならば、神界は無意識が優勢の眠りの領域、死の世界となります。
古神道も神道も死んだ人間は神に生まれ変わると言われていますが、死は永遠の眠りにつくことなので、その眠りを通して死者は神の世界に生まれ出ます。

この神界と人間界の関係は、メビウスの輪をイメージしてみると良いかもしれません。メビウスの輪は一本の帯を180度ひねって両端を繋いだもので、最大の特徴は「表と裏の区別がない」という点です。帯の表面がいつの間にか裏面になっていて、その裏もまたいつの間にか表に変わってしまいます。

メビウスの輪を一本の道として歩いてみると、表と裏の区別はないように感じますが、それを俯瞰して見てみると「捻れている」ということがわかります。まさに、神界と人間界もメビウスの輪のように、私たちからは神様が自分たちの延長線にいるように感じますが、本当は捻れたその裏に神様はいます。

この捻れのことを「反転」と言います。神界と人間界が反転関係にあることが理解できると、正しく古事記を、そして古代日本人の信仰を理解することができます。
神様と人間は上下逆さま
さて、講座第6回で取り上げたように、日本の古代信仰には現人神信仰というものがあって、神も人も東にあるニライカナイからやって来て、母胎を通って人間界に生まれ出ると考えられてきました。
母胎は生と死の中間領域です。そこから生まれる胎児は、頭を下にして生まれます。なぜ胎児は頭を下にするのかというと、医学的には頭を下にすると産道を通りやすいからだと言われていますが、私としてはもっと霊的で哲学的な深い意味があるのではと考えています。というのも、神界から人間界にやって来るとき、反転の法則が働いて、胎児はどうしても反転せざるを得ないと思うからです。

神と人間の反転関係は、言い換えると「上下逆さま」でもあると言えます。以前の古事記解説でも触れましたが、神は天である頭上にいるのではなく、神と人間は上下逆さまなので、神は私たちの足の裏の方向にいます。地球で言えば、大地の中が神界だということ。
大地は土の層からはじまり、地殻と呼ばれる岩石の層を経て外殻や内殻へと達します。大地の中が神界だとすれば、古代人がなぜ巨石信仰をしていたのか、その理由も何となく推測できます。
巨石は大地の奥深くにあったものが地表に出てきたもので、それは神界の深部から出てきていると言えます。神界の深層部にあるものは神様のレベルも相当高いということ。そこから出てきた巨石は古くて偉大な神々だから、崇拝の対象になったのではないかなと私は思います。そして、この巨石信仰の時代が、いわゆる古神道の時代なのだと思います。

ところで、地球の内部が神界だとすると、土の層だけはちょっと特殊な領域だと私は考えています。というのも、土は死んだ動植物を菌の力によって分解する死の領域であり、かつ新しい命を養う生の領域でもあるからです。そうなると、土は生と死の中間領域だと言えて、土も母胎的機能を持っているということになりますね。
そんな母胎は、人間の女性の子宮に限らず、今言った土、洞穴や洞窟、お墓やトンネルなども母胎的機能を果たします。たとえば、神が人間界に顕現するとき洞窟が神の超自然的母胎となり、人間が神界に新生するときお墓が人工母胎としてその機能を果たします。

少し余談になりますが、トンネルには幽霊が出るとよく言われていますが、それはその空間が偶然にも母胎的機能を持ってしまうからだと私は考えています。トンネルは洞穴と似たような空間構造なので、生と死の中継地点となってしまい、死者がそのトンネルを通ってこの世に現れてしまうのではないかなと思います。
以上のように、母胎は生と死の中間に位置し、かつ胎児の動きから推測するに、反転の法則が働く領域でもあると考えます。また、母胎は自然物から人工物に至るまで私たちの身近なところに多数存在していて、古来より母胎的領域は神様を降臨させる神聖な場として、神事を行う場所になってきたという歴史があります。
古神道と神道の反転関係
さて、ここまでお話してきた反転は世界や空間についてでしたが、それに限らず、森羅万象あらゆるものが反転関係を持っています。たとえば、陰と陽も反転関係ですし、男と女、プラスとマイナス、意識と無意識もそうです。それら二項対立は、それぞれが単体で存在しているのではなく、本当は目に見えないグラデーションを伴って繋がっていて、そのグラデーションが捻れ・反転です。
そして話の冒頭で触れたように、古神道がなぜ反転を伴って神道になったかというと、祭司の性別が女性から男性へ反転したからです。性別が反転すると、それまでの神事のあり方も反転せざるを得なくなります。
女性祭司の神事は、妊娠・出産を模した儀式(つまり女性器という下の口を主に使う)が行われていましたが、男性祭司になると、男性は妊娠、出産ができないため、神事は食事という上の口を用いた儀式に変わりました。神事で重要な口が上下入れ替わった、反転したということです。
それだけでなく、古神道の時代は大地を崇拝し、巨石信仰や大地に穴を掘って神の声を聞くこともありました。反対に神道は天文学を重視したため、大地ではなく、宇宙の星々を崇拝するようになりました。崇拝する対象が上下入れ替わったわけです。このように、古神道と神道は祭司の性別が変わったことによって、その全てが反転を伴って引き継がれました。

天皇が男系男子である理由
それを踏まえた上で、ここからが今日の本題。なぜ天皇は男系男子でなければいけないのか、その理由も反転の法則から導き出すことができます。
天皇が男系男子でなければならない理由は至ってシンプルで、神道の最高神が天照大御神という女神だからです。最高神が女神ということは、天皇(人間側)は男性を立てる必要があります。女神(女)は陰、天皇(男)は陽で、これで陰陽のバランスが取れるからです。

男系の中での女性天皇であれば問題ありませんが、仮に天皇を女系にした場合どうなるかというと、最高神は女神、天皇も女系と、陰と陰になってしまい、エネルギーのバランスが崩れます。天皇を女系にしたいなら、陰陽のバランスを考えて男神を最高神にしなくてはなりません。
でもそうなると、どの男神を最高神にすればいいのか、そもそも男神を立てた時点で神道ではなくなり、一神教になってしまう可能性も出てきてしまいます。

神道は自然信仰です。神道が最高神を女神とする理由は、女性を神格化したからではなく、大自然が持っているたくさんの命を生み育む力、そして種の多様性とその調和を維持する力、ときどき気性は荒いけれど、生き物すべてを優しく包み込む母胎になってくれること。そのような大自然の姿に母親のような温かさを感じ取ったから、最高神は女神(母神)になったのではないでしょうか?
よって、自然信仰である神道の最高神が女神のため、陰陽のバランスを考慮した結果、天皇は男系男子になった。これが最も単純明快な天皇が男系男子である理由だと私は考えます。
でも、もっと言えば、天皇が男系男子である理由は、大自然がもつ神秘的で壮大なシステムが関わっているからなんですけどね。今はまだそのお話ができるタイミングにないので、その日が来たら皆さんにお話しますね。それまで楽しみに待っていて下さい。
ただ、最高神が女神だから天皇は男系男子という見立ては、陰陽五行をベースにする神道において筋の通ったものだと思うので、この考えも間違いではないと私は思います。
最後に
というわけで、講座第6回から今回まで日本の古代信仰について解説してきましたが、このシリーズはここで一旦終了とさせていただきます。日本の古代信仰を知ることで、古事記の読解力は格段にアップします。この知識をもってメインの古事記解説を進めていきますので、今後ともろじろじラジオチャンネルをよろしくお願いします。

それでは今日はここまでです。
ご視聴いただきまして、ありがとうございました。
また次回もぜひ聴いてくださいね。
それではまたお会いしましょう!バイバイ!



