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古事記☆新解釈【28】神々は韻を踏む/天神と神世七代を構造で読む

天神と神世七代アイキャッチ 新解釈『古事記』
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本日のトーク内容

以下の内容は、放送内容を加筆修正しています。

解説

はじめに

皆さんこんにちは、natanです。さあ、始まりました「ろじろじラジオチャンネル」。本日もよろしくお願いします。

今日は、天地初発における天神と、イザナキ、イザナミを含む神世七代誕生の時代を、構造的に整理しなおしたとき見えてきた、新たな発見についてご紹介したいと思います。

古事記解説第1回で天神について解説しましたが、アマテラスたち三貴子誕生まで解説が進み、今後さらに物語が発展していく状況において、物語の基盤となる天神や神世七代の解釈をもう一度見直したほうがいいなと思ったので、改めて神々を構造的に整理しなおしました。

天の御中主神、高御産巣日神、神産巣日神

まずは天地初発から見直してみると、高天原において一番最初に出現したのが天の御中主神、二番目に高御産巣日神、三番目が神産巣日神です。三柱を図のように並べた理由は、天の御中主神はその名前の印象から真ん中におわす神、または中央に鎮座する主や物の神と考えることができるからです。

天の御中主神を中央に据えると、自ずと高御産巣日神と神産巣日神はその両隣に位置することがわかります。ちなみに、高御産巣日神は高みにいる神、神産巣日神は神を生み育てる神だと私は考えています。

天神と神世七代①

これら神々が出現したときの読み下し文は「ともに独神となりまして身を隠したまひき」です。この「ともに…」の部分が原文では「並」という漢字で記されていて、「ともに」と読む以外に、「並んで出現した」と読めることもあって、神々を横並びに配置しています。

また、独神というのは「性別がないこと」だとよく解説されていますが、私の考えでは、性別がないのではなく、両方の性別を併せ持った両性具有だと考えています。さらに独神とは、イザナキとイザナミとは違い、まぐわうことなく子を生める神ということでもあると考えます。

さて、この三柱誕生の再考察を通して、新たにわかったことがあります。それは、神々は直前に出現した神の名前の一部で韻を踏みながら出現しているということ。天の御中主神が出現したら、その名前の「御」を継承した形で高御産巣日神が出現し、高御産巣日神の「たかみ」の「かみ」と「産巣日」を継承した形で神産巣日神が出現していることがわかりました。

この三柱は出現後すぐ身を隠すわけですが、この「身を隠す」は「いなくなった」ということではなく、物語の根幹を支える構造として「表方から裏方にまわった」ということだと私は考えています。

以上のように、「韻を踏む」ことや「身を隠す」というのが物語が展開していくときの基本ルールになっているようです。これらのルールをもって、次の神々も出現していきます。

宇摩志阿斯訶備比古遅神、天の常立神

次に出現するのは、宇摩志阿斯訶備比古遅うましあしかびひこぢ神と天の常立とこたち神。さっき私は「韻を踏むルールがある」と言いましたが、韻は音だけでなく、場面を踏むということでもあるようです。

どういうことかというと、直前の場面が神産巣日神の登場で終わっているので、次に出現してくる宇摩志阿斯訶備比古遅神は、神産巣日神と同じ領域を踏んで出現するということです。そして、天の常立神は天の御中主神と同じく、名前に「~の」が入っているので、天の御中主神と同じ中央の領域に出現することになります。図の中央は「の」の領域になります。

この段階で新たにわかったことは、韻を踏むことは、古事記を歌として詠んだとき音の調子を整えるために用いられている技法ということだけでなく、場面が反転するためにも必要な技法だった、ということがわかりました。

天神と神世七代②

この二柱の神が出現するとき、「国わかく浮きし脂の如くして、くらげなすただよへる時、葦牙あしかびの如くもえあがる物によりて成れる神の名は…」と言われています。「浮きし脂」や「葦」といったワードを元に、ここで浮いている脂は何を意味しているかを考えてみると、それは湿地帯によく見られる水酸化鉄のコロイド膜のことではないかなと思います。

鉄といえば、このチャンネルのリスナーさんならすでにご存知のように、鉄は生命力の象徴です。生物の血も鉄、前回お話した翡翠の緑色も鉄。生命力の象徴である鉄と、燃え上がるように出現した宇摩志阿斯訶備比古遅神たちは、何やら深い関係性を持っているようです。

以上、ここまでに出現した天の御中主神、高御産巣日神、神産巣日神、宇摩志阿斯訶備比古遅神、天の常立神の五柱の神は「こと天神」と呼ばれています。

国の常立神、豊雲野神

さて、宇摩志阿斯訶備比古遅神、天の常立神も、出現したのち身を隠し、続いて神世七代の時代に入ります。はじめに国の常立神が出現してきますが、この神も「~の」を持っているので、天の御中主神、天の常立神がいる真ん中の領域に出現します。そして、豊雲野神がその右隣に出現。

この豊雲野神は、原文では雲と野の間に声をあげて読む上声の記号が入っています。これまで上声は、古事記を歌として詠むときだけに必要なものだと思っていたのですが、今回新たにわかったことは、上声の指示は「くも~」と音を伸ばすことがイコール雲を上にあげること、つまり、雲と野を切り離して間に空間を作るという意味でもあったようです。

天神と神世七代③

男女神

この国の常立神、豊雲野神もまたまた身を隠し、続いて男女神が出現してきます。一番初めに出現した宇比地邇うひぢに神は豊雲野神と同じく上声の指示記号が入っているので、豊雲野神と同じ領域を踏むことがわかります。

続いて、そのいもとして出現した須比智邇すいちに神は、上声とは逆の去声の記号が入っています。これをどう考えるかなんですが、上声が音を上げる、切り離すという意味を持つならば、去声の方は、音を下げる、遠ざかる、または消え去るという意味になると思われます。ですから、須比智邇神は4番目の宇摩志阿斯訶備比古遅神の領域まで遠ざかる形で出現したと思われます。

直前の豊雲野神のことを考えてみても、この神は雲と野の間に空間を作るので、宇比地邇神と須比智邇神もそれを継承して、お互いの間に空間を設けることになると思うので、こういった配置になると考えます。この宇比地邇神と須比智邇神の型を繰り返す形で、続々と男女神が出現していきます。

天神と神世七代④

男女神の出現が11-1於母陀流おもだる神まで進んだとき、その妹に11-2阿夜あや訶志古泥かしこね神が出現します。この神は妹なので、妹グループの方に配置したくなるのですが、ここも今回新しく発見したポイントで、阿夜訶志古泥神は男神グループに属するようです。なぜなら、彼女には上声の記号が入っているからです。

彼女が男神グループに属したことで、最後に伊邪那岐神、伊邪那美神が出現してきます。以上、8番目から11番目の男女神はそれぞれ独立した神ではなく、イザナキとイザナミを構成する要素として出現しているようです。

イザナキの身体の一部が余っている理由

さて、スライドの左右を見ていただくと、土管のような立体図が載っているかと思います。イザナキは突起のある形に、イザナミは穴の空いた形になっています。

どうしてイザナキとイザナミの姿を凸凹で表現したかというと、妹の11-2阿夜訶志古泥神が男神グループに属しているということは、イザナキの構成要素がイザナミより一つ多くなるからです。反対に、イザナミの構成要素は一つ少なくなります。

この発見によってようやくわかったことは、二人がおのごろ島に降り立ったとき、イザナキがイザナミに対して「お前の身体はどうなっているか」と聞き、「私の身体には足りない部分があります」「俺の身体は一つ余っている」という、あの会話がなぜ交わされたのかということ。その理由は、阿夜訶志古泥神がイザナキの方に出現したから、だったんですね。

だから、イザナキの余った部分、つまり阿夜訶志古泥神を使って、イザナミの足りない部分を刺し塞いで国土を生もうという話に進むんですね。阿夜訶志古泥神は、「あら、素敵な人」みたいに、相手に対して声を掛ける神でもあるので、二人のまぐあいが声掛けからはじまるのは、阿夜訶志古泥神がまぐわいに関わる重要な存在だからだと思います。

なぜ男性原理の力が妹なのか?

さて、そんな阿夜訶志古泥神は妹なので、本来はイザナミの構成要素だったと思われるのですが、なぜかそれがイザナキの方に行ってしまったらしい。国生みの最初に、イザナミが最初に声掛けをしてしまったのは、声掛けの神でもある阿夜訶志古泥神が元々はイザナミの構成要素だったから、彼女は「自分が声掛けをしなければ」と思ったのかもしれません。でもそれは今はイザナキの一部分になっているため、だからイザナキは「女から声を掛けるのは良くない」と言ったのだと思われます。

また、阿夜訶志古泥神がイザナキの一部だとすると、阿夜訶志古泥神は声掛け以外にもう一つ別の性質も持っていると思われます。それは何かというと、この神は男性原理の力、つまり生殖器で言えば男根を象徴しているのではないかなと思います。

そうなると、さらに謎なのは、それが妹だということ。なぜ男性原理の力が妹なのか?その理由は、男性原理の力が元々は女のものだったからだと私は考えています。

なぜなら、グレートマザーという存在が神々の誕生に深く関わっているからです。私は、ユング心理学をベースに古事記解読をしているのですが、古事記には明確に記されていませんが、ユング心理学では宇宙の創造はグレートマザーの活動からはじまったと言われています。

グレートマザーとは

グレートマザーは宇宙を生み出した大いなる母のことであり、土偶で表現したときは豊満な女性として、象徴で表現したときはウロボロスの蛇として古代から描かれてきました。ウロボロスの蛇は頭と尻尾がくっついているので、それははじまりもなければ終わりもないということであり、男女の区別はなく、男性原理と女性原理の力の両方を併せ持つ両性具有の象徴でもあります。その両性具有としてのグレートマザーが男と女を生み出したと言われています。

男が最初からいたわけではなく、男は女から生まれました。父という存在はいないんです。父という要素は、グレートマザーが持つ男性原理の力のことを指します。ですから、グレートマザーが世界に影響力を及ぼしていた太古の時代は、グレートマザー自らが男と女を生み出していたということになります。

天神と神世七代⑤

これは生物進化でいえば、無性生殖の時代として捉えることができるかもしれません。相手を必要とせず、自分の力だけで自己増殖できる感じですね。そんな無性生殖の時代が終わると有性生殖の時代に入るわけですが、神話の世界もこれと同じく、グレートマザーが生み出した男女が、今度は有性生殖をする時代に入ります。

このときグレートマザーが生み出した女、つまり娘は、グレートマザーの性質のほとんどを引き継いでいます。しかし、有性生殖の時代においては、グレートマザーの一部だった男性原理の力は男の方に移された。そのため、女はグレートマザーのように自己増殖ができなくなったので、だから、外に男性原理の力を求める有性生殖という形を取ることになったのだと思われます。

古事記でも阿夜訶志古泥神が妹なのに、イザナミのものではなくイザナキのものになっているのは、そういう背景があるからだと私は思います。また、イザナミが最初に声掛けをしてしまったのも、グレートマザーの時代の古い慣習(自己増殖の時代のあり方)を無意識的に繰り返してしまったからなのかもしれないなと思いました。でも、今は有性生殖の時代なので、イザナキが「それは違うよ」と指摘したのかもしれません。

グレートマザーはおばあちゃん

さて、そんなグレートマザーという存在は「古事記では明確に記されていない」とさっき言いましたが、グレートマザーの男性原理と女性原理の力を象徴した存在が、高御産巣日神と神産巣日神だと私は考えています。高御産巣日神たちは、イザナキとイザナミにとっては親といえる存在だと思いますが、古事記が主にアマテラスたちに焦点を当てて語っていることを考えると、高御産巣日神たちは、言ってみれば、おばあちゃん的存在と言えるかもしれません。それは言い換えると、グレートマザーがおばあちゃんだということです。

古来から日本は、ばあちゃんが強いです。そして、私の個人的な感想ですが、とあるアニメ作品に出てくる双子のキャラクターが、グレートマザーの男性原理と女性原理の力を見事に表現しているなと感じています。

その作品は何かというと、ジブリ作品『千と千尋の神隠し』です。私は、ここに出てくる湯婆婆と銭婆をグレートマザーの二つの側面だと考えています。湯婆婆が妹で男性原理を象徴し、銭場が姉で女性原理を象徴しています。物語では、この双子の魔女が世界を支配しているという設定になっています。

天神と神世七代⑥

物語の最後で主人公の千尋が湯婆婆のことを「おばあちゃん」と呼ぶのですが、まさにこの湯婆婆と銭婆が、古事記で言えば高御産巣日神と神産巣日神だと私は考えています。だから、古事記のトップ、世界のトップは双子のおばあちゃんなんですね。おじいちゃんという存在はいないんです。おばあちゃんが自らの力で男女を生み出していた時代がかつてあって、今度はおばあちゃんから生まれた男女が協力し合って子供を生む時代へと突入したということ。

ただ、有性生殖には男女の分離が必要なので、その分離の過程(該当する場面は黄泉の国)をも含めて語っていたのがイザナキとイザナミの物語だったのかもしれないなと思います。

まとめ

以上のことを踏まえて、最後に構造全体を通して神々を見てみると、高御産巣日神の配下にイザナキがいて、神産巣日神の配下にイザナミがいることがわかるので、イザナキとイザナミは高御産巣日神、神産巣日神が姿を変えたものとも言えそうです。また、イザナキとイザナミの間には「~の」を持つ神が存在しないので、「この空白の部分に子を生んでいこう」ということで物語が進行していくのだと思われます。

天神と神世七代⑦

というわけで、今日は、天神、神世七代における新しい発見についてのお話でした。次回は、古事記と科学における宇宙観の違いについてお話したいと思います。

natan
natan

それでは今日はここまでです。
ご視聴いただきまして、ありがとうございました。
また次回もぜひ聴いてくださいね。
それではまたお会いしましょう!バイバイ!

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